近年の歴史創作物には「おんな武将」がよく登場する。 史実から見て戦場に出たことなどないのに勇ましく武装化する姫君や、または一応籠城戦などで武装して指揮を執ったとされる奥方や、佐藤賢一の『女信長』や篠綾子の『女人謙信』ように、史実では男性だった武将が「女体化」された作品など、素材の選別は一様ではない。もっともその多くは架空の設定に彩られたものである。 だが、当時、少数ながら女性の当主も実在した。 女の身でありながら、当主として一族郎党をたばね、戦国を生きた女性たちである。 今回紹介する女性は、そんな女当主の一例を示すものだ。 永正3年(1506)閏十一月、越後守護・上杉房能は、水原祢々松(すいば