瀬戸内海に浮かぶ大島は、しまなみ海道が結ぶ島々の一つ。この島を訪れる観光客の多くが目指すスポットが、亀老山展望公園だ。 建築家・隈研吾氏が設計した、標高307.8メートルの展望台。背の高いコンクリート壁に囲まれた階段を上りきると、360度遮るものがない開放的な空間が広がる。瀬戸内海は穏やかに光り輝き、フェリーや貨物船が直線を描きながら今治港へと向かっている。 90年続く老舗タオル会社を継いだ丹後博文さんは、不安にさいなまれるたびに今治市から一人車を走らせ、この展望台を訪れたという。「当時の感情は……。あまり振り返りたくはないですね」 こちらの問いかけに、冗談めかしてそう答えた。 今でこそ経営は