小さな女の子が両手に抱えた野菜スープから湯気が上がっていた。真冬の陰鬱な曇り空が続いていたサラエボに、この日は珍しく青空が広がり、丘の上の家までくっきりと見通すことができた。市場の近くの空き地では炊き出しの熱いスープに行列ができていた。その時だ。突然、空気を張り裂くような凄まじい爆発音が市場の方から響いた。