筆者は今から9年前、バンコクで開かれた国際会議で、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏から直接話を聞く機会を得た。「祖国を民主化したい」と熱っぽく語った彼女だったが、長年の軟禁生活のせいか、世界情勢の急速な変化に戸惑っているような印象を受けた。政治的指導者としての力強さも感じられなかった。その後、ミャンマーの国家顧問兼外相となったが、今回国軍に拘束・自宅軟禁され、政権も奪われてしまった。クーデターを肯定するつもりはないが、かつてスー・チー氏に感じた「力不足」を思い起こさずにはいられなかった。