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イノベーション
2019.01.18

CESで体験したカスタマーエクスペリエンスの近未来
IoT時代、<時間や空間の概念>が変わる

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CES 2019のクアルコムブースの5Gロゴ(筆者撮影)

 米ネバダ州の砂漠の真ん中に位置する、魔都・ラスベガス。

 1月6日(日)の午後、今年もまた「CES 2019」に参加するため、ラスベガスの玄関口、マッカラン国際空港に降り立った*1

 CESは言わずもがな、世界最大の民生技術(Consumer technology)の展示会である。民生技術ということは、すなわち軍事技術以外は何でもあり、ということでもある。

 ちなみに、CESの出展社は4500社、来場者は18万人超。来場者のうち3分の1強は中国、韓国をはじめとする海外勢である。ここ数年、かつての日本勢の存在感と輝きが年を追うごとに弱くなっているのは、非常に残念なことだ。

*1:展示会は1月8日(火)から1月11日(金)までだが、各社の記者会見や基調講演は会期に先立って行われることもある。

CES 2019を読み解く4つのキーワード

 まず、CES 2019の大まかな流れを理解するために、主催者であるCTA(全米民生技術協会:Consumer Technology Association)によるトレンド分析「CES 2019 Trends to Watch」を見ていこう。

 CTAの見立てによれば、過去20年は「デジタルの時代」(2000年〜)、「コネクテッドの時代」(2010年〜)と遷移し、これからは「データの時代」に突入して、AIが人々の生活に溶け込むことで真の意味での「スマート」が始まるという。

 事実、筆者が後述する基調講演や展示を通じて垣間見たのは、AIや次世代通信規格5Gなどの基幹技術が、人間の生活のほとんどすべての領域に広く深く入り込み、時間や空間など物理的な制約で人間がこれまでできなかったことの垣根を取り払って、人間が持つ能力の可能性を大きく拡張していくという未来予想図だ。

 それら基幹技術は、自動運転、スマート家電、ヘルスケア、スポーツテック、ロボティクス、XR(VR/ARなど)、さらにはレジリエント(防災・減災)関連製品に至るまで、IoTを活用したテクノロジーとお客さまとのあらゆる「接点」において、カスタマーエクスペリエンス(お客さま体験)を変えていく。

 そして、あえて一言付け加えるならば、カスタマーエクスペリエンスをお客さま主語でチューニングするのはAIそのものではなく、他でもない人間の役割(企業内のマーケティング部門の社員の主要タスク)ということになるだろう。

 お客さまのカスタマーエクスペリエンスが、本当にフリーハンドで「スマート」な体験になるかどうか。

 提供するエクスペリエンスの「スマートさ」の優劣で、企業やブランドのマーケティングセンスが問われる時代がやってくるに違いない。

 近未来のブランディングには、「マーケティングとテクノロジーと複眼の視点」を持つことが何より求められるのだ。

 さて、CES 2019を筆者自身の読み解きも加えながら、もう少し解像度を上げて観ていこう。

 CES 2019をざっと俯瞰すると以下の『4つのキーワード』が浮かび上がってくる。

 (1)輪郭が見え始めた5Gのソリューション
 (2)踊り場を迎えた自動運転
 (3)生活に溶け込むAIやIoT技術
 (4)誰がための技術? ドローン/8K

 今回の寄稿で全てを網羅するのはボリューム的に難しいので、今回はCES 2019最大のアジェンダである(1)の「輪郭が見え始めた5Gのソリューション」にフォーカスし、(2)以降は次回以降の連載でカバーさせていただきたいと思う。

輪郭が見え始めた5Gのソリューション

 CES 2019、会期2日目の1月8日(火)の夕刻。

 ベネチアンホテル5階のPalazzo Ballroomで行われた基調講演のステージに、黒いTシャツ姿の長身男性が颯爽と登場した。

 米国でNo.1の通信キャリア・ベライゾン(Verizon)の新CEO ハンス・ベストベリ(Hans Vestberg:以下ベストベリ)氏(53歳)*2である。

ベライゾン(Verizon)の新CEO ハンス・ベストベリ(Hans Vestberg)氏。(CESコーポレート基調講演のYouTube動画より)

 ベストベリは開口一番、やや北欧訛りのある英語で、「データ時代に突入し、第4次産業革命(4IR)が起きて全てが変わる(Change Everything)」こと、そして、その変化の本質は「人間の能力の向上(Humanability)」であると宣言した。

 続けて、ベライゾンが社運をかけて注力する5Gには「8つの優れた特徴」(The Eight Currencies of 5G)があると指摘し、それぞれについて言及した。

 ベストベリがプレゼンテーションした、5Gの「8つの優れた特徴」とは以下のようなものだ。

 (1)ピークデータレート:100MB/秒
 (2)モバイルデータ量:10TB/秒/km2
 (3)移動速度:500km/秒
 (4)接続デバイス:100万個/km2
 (5)エネルギー効率:現在の消費量の10%
 (6)専用回線のスライシング(切り出し):90分で完了
 (7)信頼性:99.999%
 (8)E2E(エンドtoエンド)の遅延度:100分の5秒

 5Gはモバイル業界で統一された規格であり、項目それ自体にさほどの目新しさはない。

 しかし、ベストベリがあえて「The」をつけた(The Eight Currencies of 5G)理由は、リーダー企業としてのベライゾンの矜持を示したものであり、AT&T、TモバイルUS、スプリントなど競合他社が打ち出してくるであろう「5Gもどき」に対する牽制でもあろう。

 ベストベリの基調講演は、CESの主催者CTAによってYouTubeで公開されているので、その全体を閲覧することができる。

【参考】CES 2019 Verizon Corporate Keynote (https://www.youtube.com/watch?v=ljbUJsMV_Sg)


 筆者が現地で実際にプレゼンテーションを見聞きして感銘を受けたのは、5Gの「8つの優れた特徴」を超満員のオーディエンスに腹落ちさせるための演出技法だ。

 ベストベリやベライゾンの社員が企業主語で先進ソリューションを一方的にデモするのではなく、専門性の高いパートナー企業のトップ数名をステージ上に招いて、価値共創パートナーの視点から「なぜ/どのような形で5GはHumanabilityを提供できるのか」について語らせたのである。

 ベライゾンの関係会社で、ドローン測量を専門にするスカイワード(Skyward)社のマライヤ・スコット(Mariah Scott)氏がロサンゼルスにあるドローンを遠隔操作するデモ、病院に医療ソリューションを提供するメッドビズ(Medivis)社の共同創始者クリストファー・モルレー博士(Dr. Christopher Morley)による外科手術現場におけるAR画像の活用の紹介の2つは、特に興味深かったと言える。

 これらは、現時点では、プレゼンテーションを想定した5Gサービスのプロトタイプにすぎないのかもしれない。

 しかし、近未来、5Gの超高速・大容量というケイパビリティを活用して「時間や空間の概念」を超えることがいつでもどこでも可能になれば、「Humanability」を実現するお客さま体験創出と堂々と宣言できるだろう。

*2:ハンス・ベストベリは2018年8月、長年CEOを務めてきたローウェル・マクアダム氏(現ベライゾン非常勤会長)を引き継ぐ形でCEOに就任した。

サバイバルレースの中で行われる5G基地局インフラの整備

 実は、ベストベリが社運をかけ、全方位的に5Gに舵を切らなければいけないのには理由がある。

 ベストベリの前職は、スウェーデンの通信大手エリクソンのCEO。業績低落に歯止めをかけられなかったという理由で2016年7月に解任され、その後、ベライゾンに入社して最高技術責任者(CTO)を務めていた。

 かくいうベライゾン本体も、モバイル通信市場の同質化・成熟化が進む中で格安の競合他社に顧客を奪われており、約1200億ドル(約13兆円)近い債務を抱えているのが現状だ。

 競合に目を転じても、AT&TはディレクTVの買収(2015年)に続いてタイムワーナー買収を決め、モバイル通信領域以外のコンテンツ収益の確保に躍起であるし、日本のソフトバンクが噛んでいるTモバイルUSとスプリントの合併劇も進展中で、モバイル通信業界全体が生き残りをかけた戦いのさなかにある。

 そのような中で、経営的手腕には毀誉褒貶あるものの、デジタル技術に精通した印象の強い人物を経営トップに据えることで、5Gをブランドの差別化ドライバーとして位置付けるとともに、付加価値性の高い収益源に育成したいというベライゾンの戦略が透けて見える。

 もっとも、ベストベリの構想が「絵に描いた餅」にならないためには、ベライゾンにとって、早急な5Gの基地局インフラの整備と継続的な投資が急務であることは間違いない。

 実際にベストベリ自身や壇上に上がったパートナー企業のトップからは「プロジェクトの成果は来年発表します」「来年もこの場でお会いできることを楽しみにしています」というコメントが判で押したように繰り返された。

 CES 2019で、これまで曖昧模糊としていた5Gソリューションの輪郭は見えた。

 IoTが、BtoB・BtoCを問わず、お客さまに<時間や空間の概念を超えた>エクスペリエンスを日常的に提供できるようになるまでには、まだ1年以上の時間が必要なこと、そして、ひょっとすると民生技術よりも軍事技術で5Gの導入と活用のスピードの方が速いことを我々は頭の片隅に止めておいたほうが良いかもしれない。

 次回は、CES 2019における自動運転、AI/IoT、ドローン/8Kの動向について見ていくことにする。

続く

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