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テクノロジー
2018.01.30

Appleのスマートスピーカー「HomePod」は何が違う?
遅れたSiri搭載AIスピーカーは巻き返しを図れるか

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2018年1月23日(現地時間)、米Appleは同社のAIアシスタント「Siri」を搭載したスマートスピーカー「HomePod」を2月9日よりアメリカ、イギリス、オーストラリアで発売すると発表した。1月26日より予約受付を開始しており、フランス、ドイツでも今春発売予定。残念ながら、現状日本での発売時期は未定だ。

昨年6月の時点では2017年12月発売と発表されていたが、延期となっていたHomePod。発売を待ち望んでいたAppleファンも多いのではないだろうか。

ウェイクワード(スマートスピーカーを起動させるための言葉)はもちろん「Hey Siri」。最新のニュースや天気などを教えてくれる他、リマインダーを設定したりメッセージを送ったり、ハンズフリー通話、スマート家電の操作にも対応するとのこと。一般的なスマートスピーカーでできることは一通りできると思って良さそうだ。

だが、そもそもHomePodの頭脳となるSiriは、音声アシスタントとして後発のAmazon AlexaやGoogleアシスタントに一歩及ばない、と言われるようになって久しい。シェア争いが激化するスマートスピーカー市場に後れて参入する以上、既存のスマートスピーカーにはない魅力を提示できない限り、独走するAmazonはおろかGoogleやMicrosoftと並ぶことも難しいだろう。

ただでさえ、HomePodは349ドル(約3万9千円)というスマートスピーカーとしてはかなり強気な価格設定となっている。当然、他とは違う魅力を用意しているはずだ。

既存のスマートスピーカーとの違いや、日本で発売された際に既存製品と渡り合っていけるのかを見てみよう。

メインターゲットは本格志向の音楽ファン&Appleファン

HomePodのアピールポイントは、音質。先日発表されたニュースリリース(※1)でも、まず「家の中のどこに置いても高品質な音楽体験ができる」ことを強くアピールしている。もちろん、スマートホーム家電の音声操作ができる等の「スマートスピーカー的」機能にも触れられてはいるが、後半部分からの言及となっている。

「音声であれもできる、これもできる」ことをアピールし合い、連係サービスの数で争うAmazonやGoogleとは違った土俵に立っていることが分かる。

つまりHomePodはスマートスピーカーである以前に、定額制の音楽配信サービス(端的に言えばApple Music)を快適に使うための、高品質ワイヤレススピーカーなのだ。

高さ7インチ(約17.8センチ)以下の本体に、空間認識技術や強力なスピーカーを内蔵している。画像はプレスリリースより引用

では、HomePodは既存のスマートスピーカー市場では全く戦えないのかというと、そうとも言い切れない。何故なら、そもそも欧米での「スマートスピーカー流行り」は、音楽配信サービスの普及によるところが非常に大きいという背景があるからだ。

Amazon Echoが市場に初登場したのは2014年11月。既に「そこそこの音質で手軽に音楽が聞ければ良い」というニーズを満たす安価なスマートスピーカーは市場にあふれかえっている。

そこへAppleが持つブランド力を持って、既存のスマートスピーカーと比べて圧倒的に上質な音楽体験ができるスピーカーを投入したとなれば、飛びつく音楽ファン(やAppleファン)は少なくないだろう。

AppleのHomePod。画像はプレスリリースより引用

とはいえ、中には当然音質重視のスマートスピーカーも存在する。最近は日本国内でもSONYやオンキヨーなどから、AlexaやGoogleアシスタントを搭載した音質重視のサードパーティ製スマートスピーカーが次々に発売されている。例えば、LINEのClova WAVEやAmazon Echo Plusも「音質が良い」と言われる機種だ。

以下に、現在国内で音質が評価されている、またはアピールポイントにされているスマートスピーカーや搭載されているアシスタント、その価格(※2)を簡単にまとめてみた。

・Amazon Amazon Echo Plus(Alexa)17,980円(税込)
・LINE Clova WAVE(Clova)14,000円(税込)
・ソニー LF-S50G(Googleアシスタント)26,870円(税込)
・オンキヨー VC-GX30(B)(W)(Googleアシスタント)26,870円(税込)
・オンキヨー VC-PX30(Alexa)32,184円(税込)
・JBL JBL LINK 20(Googleアシスタント)21,470円(税込)


この中で最も高額なのはオンキヨーのVC-PX30(通称P3)だが、約3万9千円のHomePodよりは手ごろに思えてしまう。

優れた音声アシスタントと、高品質な音響機構。これらを併せ持つことが可能なオーディオメーカー製のスマートスピーカーが、当面HomePodのライバルとなるのではないだろうか。

音楽配信サービスが利用できれば良い、という層にしても、同程度の音質でより安価な上、より優れた音声アシスタントが搭載された製品があれば、そちらを選ぶのは自明の理。

少なくとも現在発売されているこれらのスピーカーに比べて、音質面で圧倒的に優れていることを示すことができなければ、市場で存在感を保ち続けるのは厳しいだろう。

※1:HomePod arrives February 9, available to order this Friday - Apple

※2:メーカーサイト直販価格を参考に記載。キャンペーン価格等を適用しない、本体のみの価格

日本人の「音楽の聴き方」が変わる可能性も?

Siri自体は日本語対応しているので、HomePodの日本発売はおそらく、Amazon Echoのように何年も待たされるということはないはずだ。欧米と違い音楽配信サービスがそこまで普及していない上に、昨年後半からようやく「スマートスピーカー」という言葉が認知され始めた今の日本で、HomePodはシェアを拡大していけるのだろうか。

それを考察するために、2017年3月31日にインプレス総合研究所が発表した、定額制音楽配信サービス(サブスクリプションサービス)の利用実態調査結果を引用したい(※1)。

国内での普及が遅れていると言われる音楽配信サービスだが、同調査によると少しずつではあるが、着実に利用者が増加している。

定額制音楽配信サービスの利用率。画像はインプレスのプレスリリースより引用

また、メインで利用しているサービスの内訳を見ると、Apple Musicは全体で第3位。年代問わず圧倒的な支持を受けるPrime Musicはさすがと言ったところだが、2位以下に大きな差はない。

メインで利用している定額制音楽配信サービス。共に画像はインプレスのプレスリリースより引用

この調査結果では「定額制音楽配信サービスで不満に思うこと」の1位が「好きなアーティストの曲が配信されていない」(43.5%)であることも発表されている。元々海外産のサービスが多いため、日本人好みのアーティストによる楽曲が少ないのは仕方のない部分ではあるが、裏を返せばそれだけ伸び代が残されているサービスだと言える。

最も利用されているPrime Musicにしても、同調査の「現在メインで利用しているサービスを選んだ理由」で2位となった「他サービスの会費によりおまけ的に利用できる」(26.2%)ことによる利用者が大多数を占めているはずだ。

こうした国内事情を鑑みると、今後のApple Musicの拡充次第ではHomePodにも十分チャンスはあると言えよう。CDを購入したり逐一データを購入したりせずとも「Apple MusicとHome Podさえあれば、好きな時に好きな音楽を高音質で楽しめる」と認知されれば、特にAppleファンが多いと言われる日本では広く受け入れられる可能性が高い。

そうなれば、現状決め手に欠ける国内スマートスピーカー市場の勢力図にも変化が生じてくるだろう。ともすれば間違いなく苦戦が予想される海外ではなく、音楽配信サービスもスマートスピーカーも普及しきっていない日本の方が、HomePodは「売りやすい」のかもしれない。
HomePodは日本でヒットする最初のスマートスピーカーとなるかもしれない、と言うとさすがに買いかぶりすぎだろうか。

後発のスマートスピーカーとして、厳しいスタートを切ることになったHomePod。デザインやハード性能の追求だけでなく、Apple MusicやSiriのアップデートに一層力が入れられることを期待ながら、国内発売を待ちたい。

※1:定額制音楽配信サービスの利用に関する調査結果2017 - インプレス

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