駅前の住宅街には誰もいなかった。真夏のような太陽が真上から照りつけていた。汗をかきながらアスファルトの道を歩いた。桜並木が切れた。ホームが見えた。「夜ノ森」。青いプラスティックのベンチが見える。屋根もない簡素なホームだった。駅の向こう側の土手が見えた。赤や白のツツジが埋めていた。