「こんにちは」。声をかけても返事はない。暗がりから臭気が来て鼻を打った。私はそれが何か知っていた。津波が運んできた海の泥の匂いだ。2011年3月に取材に訪れた岩手県野田村は、街中がこの匂いで満ちていた。