小説家は、現実から切り取った情報を組み合わせて、作品の土台を築く。その舞台で登場人物たちをいろいろな目に遭わせることで、物語を生み出していくわけだ。それに対して、講演会では、主催者が私を連れ出して、ある日のある場所で見ず知らずの人たちの前に立たせるのである。この逆転はなんともスリリングで、実に多くのことを学ばせてくれる。