* 本コンテンツは以下講演の【講演動画】と【全文採録記事】で構成しています *
第3回 人・組織・働き方イノベーション
特別講演2「経営戦略と連動した人財戦略~イノベーション創出に向けた人・組織改革~」

開催日:2023年11月21日(火)
主催:JBpress/Japan Innovation Review

 がん・バイオに強みを持つ日本トップクラスの医療用医薬品メーカーである中外製薬では、「2030年トップイノベーター像」の実現を目指す成長戦略「TOP I 2030」を策定しています。その実現に向け、人事には「これからの事業に求められる人財像を描き、彼らを引きつけ、能力を十分に発揮させ、成長を奨励し、組織パフォーマンスにつなげる人財マネジメント」が求められていると語るのは、同社の上席執行役員で人事、EHS推進統括の矢野嘉行氏です。

「多様な個々の発掘・成長・発揮が、個を変え、会社を変え、中外グループ全体の成長につながる」として、同社の人財マネジメント方針について解説する矢野氏。「個を描く」「個を磨く」「個が輝く」という3つの観点から、成長戦略の実現に向けた人事戦略と具体的な施策の数々を紹介していきます。

 グローバルに存在感を発揮する中外製薬の、成長戦略と連動した人事戦略とは。図解とともに、矢野氏が丁寧に解説します。

【TOPICS】

  • 中外製薬が掲げる「2030年トップイノベーター像」と新成長戦略
  • 人財マネジメント方針の3つのテーマ、個を描く・個を磨く・個が輝く
  • 個を描く1:適材適所から適所適材へ
  • 個を描く2:「Check in(1 on 1)」と、成長と自律を促進する「5C」とは
  • 個を磨く1:自律的な学び・成長の支援と「学びの5ステップ」
  • 個を磨く2:デジタル人財の育成強化
  • 個が輝く1:役割・成果に応じためりはりある評価・処遇へ
  • 個が輝く2:イノベーションを生む組織風土改革
  • 個が輝く3:「働きがい改革」に必要なコミットメント
  • (まとめ)人財マネジメント方針に基づき、人的資本の最大化と成長戦略の実現へ
動画挿入位置

ヘルスケア産業のトップイノベーターを目指す中外製薬の経営戦略と人財戦略

矢野嘉行氏(以下、矢野氏) 皆さん、こんにちは。中外製薬の矢野です。本日はよろしくお願いします。本日は、「経営戦略と連動した人財戦略 ~イノベーション創出に向けた人・組織改革~」についてお話をしたいと思います。

 まずは当社の会社概要です。中外製薬は、がん・バイオに強みを持つ研究開発型の製薬企業です。医療用医薬品メーカーとして日本トップクラス、国内がん領域で売り上げシェア第1位、国内の抗体医薬品市場で売り上げシェア第1位です。

 ユニークなビジネスモデルが特徴であり、戦略パートナーであるロシュ社が株式の59.89%を保有している中、独立した上場企業として自主的経営を実行しています。当社の強みは、独自のサイエンス力と技術力です。これらをてこに、創薬を進めています。

 続いて、当社が創業から大切にしてきたことを簡単にご紹介します。創業が1925年。関東大震災の薬不足を憂いて創業したものです。そして1960年には医療用医薬品へシフトし、1980年代にバイオ医薬品に注力、2002年に先ほどお話ししたロシュとの戦略的アライアンスを開始しました。創業時の「患者さんと人々の健康に貢献する」という意志を受け継ぎながら、社会や患者さんの期待・要望の変化に応じてビジネスモデルを変革してきました。

 この図は、そのユニークなアライアンスの中でのポジショニングです。「世界から日本へ、日本から世界へ」を方針として、独立経営による多様性と創造性の確保、そして相互協力による効率性と生産性の向上を目指しています。当社が日本で創薬開発した医薬品をロシュもしくはジェネンテックを通じてグローバルで販売し、逆にロシュ、ジェネンテックで創製されたものを当社が日本で販売する。そのような、トップバイオ医薬グループとしての競争力を互いに確立しています。このアライアンスは2002年に実施され、20年が経過しています。その20年で売り上げは約7倍、営業利益は17倍に成長しています。

 この図は、「2030年トップイノベーター像」という、2030年に向けた成長戦略です。ここに書いてあるように、「中外なら必ず新たな治療法を生み出してくれる」と世界の患者さんが期待するような存在、世界中の情熱ある人財を引きつけ、ヘルスケアに関わる世界中のプレーヤーが「中外と組めば新しい何かを生み出せる」と想起するような存在、そして、ESGの取り組みも含めて社会課題解決をリードする存在となることを、トップイノベーター像として掲げています。

 さらに、この図の下部分に書いてあるように、ロシュとの協働の下、引き続き「革新的新薬」を事業のコアに据えながら、製薬企業に限らず多様なプレーヤーがイノベーションに挑戦する世界のヘルスケア領域においてトップクラスのイノベーターを目指すことを掲げています。

 下の図が、そのトップイノベーター像の実現に向けた成長戦略「TOP I 2030」です。

 ここに書かれているように、2030年に「R&Dアウトプット倍増」、そして「自社グローバル品毎年上市」を掲げており、そのために日本を発とした世界最高水準の創薬実現とバリューチェーンを含めた先進的事業モデルの構築を戦略として掲げています。

 その2つの戦略の実行に向けて、DX・RED SHIFT・Open Innovationの3つをキードライバーとしています。RED SHIFT のREDとはResearch and Early Developmentの総称であり、RED SHIFTは研究から早期開発という段階に、より資源や人、物、事業、プロセスをシフトしていこうというものです。

 では、この成長戦略の実現に向けて、人事機能もしくは人事としてどのように考えていけばいいのか。今までの事業、強み、そしてこれからの環境変化を踏まえて新しいことをしていこうという時には、「深化」と「探索」の両立が非常に重要な経営課題になってきます。

 深化においては、今まで自分たちが築き上げてきた強みの徹底的な洗練、そして成功モデルにおける価値最大化と生産性の追求を進めていきます。一方で、探索という切り口では、今までのやり方・モデルの変革が求められます。Open Innovation、自前主義からの脱却、次を見据えた投資・布石などが求められてきます。

 そのような中で、人的資本すなわち「人」をどのように考えていけばいいのか。われわれが思うに、従来の延長線上ではなく、これからの事業に求められる人財像を描き、彼らを引きつけ、能力を十分に発揮させ、成長を奨励し、組織パフォーマンスにつなげる人財マネジメントが、今、求められています。

 下の図は、TOP I 2030実現に向けた人財マネジメント方針をまとめたものです。新しい挑戦をする上で、多様な個々の発掘・成長・発揮が、一人一人の個を変え、会社を変えて中外グループ全体の成長につながっていく。このような人財マネジメント方針を掲げています。

 ここでは、大きく3つの「個」を取り上げています。1つが「個を描く」。社員一人一人がキャリアを描き、未来の自己実現と会社の目標であるTOP Iをシンクロさせるというマネジメントを考えています。2つ目が「個を磨く」。社員の自主性を尊重し、社員が挑戦して自律的な学びや専門性を強化するというフェーズです。そして、3つ目が「個が輝く」。社員が自分の力を最大限発揮し、挑戦によって成長が実現できる環境を整えていきます。

 この3つを大きなマネジメント方針として掲げ、人事戦略、制度改定等を進めています。一人一人の個が変わる事で、会社やクループ全体が成長して、最終的にわれわれが目指している社会との共有価値創造の実現につなげていこうと考えています。

適所適材の人財マネジメントと自律人財の育成で、“個を描く”

矢野氏 「個を描く」という人財マネジメント方針の中で掲げているのが、成長戦略に基づいてポジションをデザインし、適材をアサインすることです。

 この図の左側は、今までの人財マネジメントです。適材適所すなわち今いる人財からできるポジションをつくり、組織をつくっていくやり方です。これでは、戦略・ビジョンと組織もしくは人との間にギャップが出てきて、特に高い目標を掲げている成長戦略を実現するにはなかなか難しい状況になってしまいます。

 そこで、このマネジメント方針を適材適所から適所適材に変えていきます。この図の真ん中にある通り、戦略・ビジョンからその戦略を実現するための組織・ポジションを設計し、それを実現するために人を投与して配置していきます。この場合、ギャップは現有人財との間に出てきます。

 これを解消するために、われわれは「ポジションマネジメント」と「タレントマネジメント」の両立を図っています。ポジションマネジメントによって、より成長戦略を実現できる挑戦的なポジション設定や人財要件を再定義し、「どのような人ならできるのか」を早くから考えて戦略・ビジョンをつくっていきます。

 一方で、現有人財と戦略・ポジションのギャップをなくすために、タレントマネジメントを駆使してコンピテンシー・パフォーマンス・ポテンシャルの3つの要素に基づいて人財の早期見極めと発掘を行います。さらに、プールされたタレント人財については育成体系を提供して、後継者候補人財の戦略的配置による育成の加速を図る。このような考え方で、個を描いていこうとしています。

 とはいえ、制度や仕組みだけでは、人を描いて育てていくことは困難です。そこで、上司と部下の対話強化施策として、当社では「Check in(1 on 1)」という機会を設けています。

 その中で、マネジメントの変革としては、自律人財の育成を大きなテーマに掲げています。そして、今までの直接指示型のマネジメントから自律支援型のマネジメントへの変換に取り組んでいます。併せて、上司と部下のコミュニケーションの質と量を高めていく。この2つの施策を、Check inという機会を通して推進しています。

 この図は、直接指示型マネジメントと自律支援型マネジメントの比較です。

 ここにある通り、指示・命令をしていく、部下にきめ細かな指示を出し、目標・課題や答えを与えていくのが直接指示型でした。育成途中の若い世代の人たちには、このようなものが必要かと思いますが、現在の環境変化の中でより自分で考え行動を起こす人財を育成していくためには、自律支援型のマネジメントに変換していく必要があるとわれわれは考えています。

 自律支援型のマネジメントでは、聴く、質問する、アドバイスするというコミュニケーションスタイルをとり、部下が自律的に働けるように任せていきます。1対1の対話や助言によって、部下の自律性・主体性の向上と成長支援を主眼において、本人や組織の目標達成に向けて能力を最大限に引き出すことを目指します。このようなマネジメントの実現に向けた変革に、現在取り組んでいます。

 上司と部下によるCheck inのテーマとしては、当然、業務の話がメインになります。しかしながら、それに加え、先ほどお話しした自律支援型の、成長と支援を促進するテーマでの対話をお願いしています。われわれは、これを「5C」と呼んでいます。

 1つ目はCareer(キャリア)です。部下のキャリアへの支援をどう考えていくのか。本人がどのような方向性を目指し、どのような仕事の価値観を持っていて、それをどのように実現していけばいいかという話をしてもらいます。

 2つ目は、Capability(ケイパビリティ)です。部下の育成すべきスキル・能力、育成機会をどのように話し合っていくのか。

 3つ目のConnection(コネクション)は、部下を成功に導く連携・協働です。医薬品のプロジェクトは、いろいろなプロジェクトチームが機能横断で組まれています。このプロジェクトの成功のためには、成功に導く連携・協働、クリエーション、共創が必要になってきます。これをどのようにやっていけばいいかについて話し合います。

 そして、一番大切なのが、4つ目のContribution(コントリビューション)です。今自分がやっている業務が、組織全体、会社全体に対してどのように貢献しているのか。そこをしっかりと話し合い、部下のモチベーションを高めていくことが非常に重要です。

 元々はこれらの「4C」で動いていたのですが、コロナ禍を機に、もう1つのCを付け加えました。それが、Condition(コンディション)です。在宅勤務等で上司と部下がなかなか直接会えない状況の中で、部下の心と体の状況についてもぜひ話してほしいと考えています。

 このような5CのCheck inを通して、より自律できる社員を育てていくことが、個を描くという方針における大きなテーマです。

自律的な学び・成長の支援とデジタル人財の育成強化で、“個を磨く”

矢野氏 次に「個を磨く」という2つ目のテーマでは、磨く・学ぶ・成長がキーワードになってきます。特にジョブ型の人事制度等を入れる際には、やはり一人一人の成長実感がそれぞれの組織の活性化、個人の成長につながってきます。これをどのようにつくっていけばいいのかを、個を磨くというテーマの中で進めていこうと考えています。

 まず、当社では、目指したい役割に必要なスキル・コンピテンシーを可視化して、適切なコンテンツを自ら主体的に選び、いつでもどこでも学べるオンデマンド型のプラットフォーム・研修を提供しています。これはコロナ禍以前から企画していましたが、ちょうど2020年のコロナ禍の時期に稼働となりました。このようなオンデマンド型のプラットフォーム、学びの自律的な成長の支援のために、システムの開発を進めていました。

 研修については、今までは座学が中心で、上司から「そろそろこのような研修を受けようか」と指示、推薦されて行われてきました。これをより主体的な学びに変えるために、自分でキャリアを考え、そのキャリアを埋めるために何を学べばいいかを考えて、選んでもらうプラットフォームに変えています。

 また、研修コンテンツも、今までは会社が提供する各部門特有の研修でしたが、自分のキャリア開発に向けて学習機会をさらに広げていくために、いろいろな他部門の研修も選べるような仕組みにしています。

 そして、社員全員に、自分の成長を自分で学んでつくっていくための「5つのステップ」を伝えています。

 1つ目のステップは、「目指す姿を描く」ことです。自分がどのような方向のポジションを目指していきたいのか、どのような仕事をしたいのかを上司と部下で話しながら描いていきます。2つ目は、「ギャップの把握」。当然、今のコンピテンシーや経験から見ると、ギャップがあります。それをしっかりと把握した上で、何を学べばいいのかを考えてもらい、選んでもらいます。3つ目が、「自ら学ぶ」。4つ目が「仕事に活かし、成果を出す」。そして5つ目の「フィードバック」では、上司との1on1などでしっかり話し合ってもらい、フィードバックしていきます

 このような自律的な学び、成長の支援をつくっていく上で重要なのが、図の下部分に記載した「学びのキーワード」です。まず、「主体的」であること。そして、「Future Skilling(学びの方向性)」を考えること。さらに、これから特に注力したいのは、「相互研鑽」です。1人で学ぶのではなく、メンバー同士もしくは同僚同士、さらには部門を超えて学ぶ機会をつくっていく。この3つのキーワードで、われわれは自律的な学び・成長の支援を進めています。

 下の図は、Future Skilling(学びの方向性)の考え方です。当社では、「アップスキリング」と「リスキリング」、そして「クロススキリング」の3つの学びの方向性を社員に提示しています。

 アップスキリングは、現在の専門性をより深めていくことで、その分野の第一人者を目指すようなプログラムです。リスキリングは、プラスアルファのスキルを加えて専門性を広げることで、より広いキャリアを目指していく学び方です。クロススキリングは、専門性とマネジメントスキルを両方活かすようなイメージです。中外製薬の場合、先ほどお話ししたように、医薬品のプロジェクトはクロスファンクショナルなチームになります。そのチームリーダーは重要なポジションであり、そこを目指す上でもクロススキリングを推奨しています。

 もう一つ、当社では、デジタル人財の育成強化にも取り組んでいます。

 デジタルスキルサーベイにより全社の状態を可視化し、専門DX人財を育成するために作成した選抜プログラムを「Chugai Digital Academy」と呼んでいます。その中で、体系的かつ最新のデジタル研修のプログラムと、全社のデジタルプロジェクトへの戦略的配置を進めていくというコンセプトで、3年前から進めています。

 このように社内でデジタル専門人財を育成するとともに、デジタル人財育成のナレッジ・ノウハウを社外に還元していく、外とのコラボレーションをより進めていくプログラムも同時に進めています。この図でいうと、オレンジ色のところです。社外での実践的な研修や人財交流、デジタルの中のコミュニティーへのアクセス、外部プログラムなど、外への交流と内部の研修の2つを同時に進めることで、デジタル人財の育成強化を進めていきます。

ジョブ型人事制度の導入と組織風土改革で、“個が輝く”

矢野氏 3つ目が、「個が輝く」という人財マネジメント方針です。役割・成果に応じためりはりのある評価・処遇の実現を目指し、新しいジョブ型の人事制度を2020年に導入しました。ここでは、ジョブ型をどう運用するかが非常に重要になってきます。

 制度設計としては、年齢属性にとらわれず、誰もが活躍できる制度を目指しました。管理職試験等は全て廃止して、若い人でもマネジメントができる実力があれば登用し、逆にいわゆる役職定年も外して、シニア社員になっても引き続きマネジメントができる体制にしています。そして、これに加え、役割・成果に応じためりはりのある評価・処遇が何よりも重要になってきます。

 さらに、自らを磨き自らキャリアを開発する社員のチャレンジを推奨する制度にするため、社内公募制などの手挙げ制度を含め、いろいろなチャレンジを推奨する人事制度をつくっています。その運用定着においては、Pay for Position・Beyond Ourselves・Career for Futureの3つを重要なテーマとしています。

 また、個が輝くという方針の中で、「働きがい改革」を進めています。これは、部門の枠を超えてイノベーションを生み出す風土の醸成がテーマです。

 この図の下部分にあるように、社員のエンゲージメント(自律×協働×成長)の向上や社員を生かす環境(柔軟な働き方×コミュニケーション×エンパワーメント)の実現を目指した働きがい改革を進めています。この働きがい改革を通して、「活躍社員」の増加を目指しています。

 ここでいう活躍社員とは、会社のビジョンや目標の実現・達成に向けて、会社が目指していることと自分がやりたいことをシンクロさせて、能動的・自発的に行動する人財を指しています。このような人財を増やしていくことで、組織を活性化し、TOP I2030のチャレンジングな目標を達成することを目指しています。

 個が輝くためのもう一つの取り組みとして、自律的なDX参画を通じた組織風土改革についてもお話ししたいと思います。

 当社では、Chugai Digital Academyとともに「Digital Innovation Lab」を設置しています。これは、社員が手挙げでDXによるアイデアの提案を行い、コンセプトの具体化を行って、良いアイデアがあればProof of Conceptの計画化を実行し、予算を付けて実現してもらうものです。さまざまなプロジェクトが進んでおり、人事関連でもウエアラブルウオッチを使って健康経営を考えていくデジタルシステムのプロジェクトが採択されました。ほかにも、AIを使った創薬など、さまざまな点で従業員のアイデアを生かそうという取り組みです。全ての社員にDXによるビジネス課題解決やアイデア実現の場を提供することで、自ら主体的に変革を起こそうとするマインドづくりにつながるのではないかと思っています。

 次に、この働きがい改革に必要なコミットメントについてです。われわれは働きがい改革を進めていますが、これは社員と会社両方のコミットメントがあってこそうまく回るものだと考えています。一人一人の自律を前提として、会社と社員が双方の約束と責任を果たしていくことが大切です。

 社員は「自律した社員」であり、特に中外ミッションへの理解・共感、主体的な成長と挑戦、そして他のメンバーとの協働による組織の活性化などにコミットメントしてもらいます。一方、会社はそのような「自律した社員」を尊重して支援します。社員の成長と挑戦を後押しし、公正な評価と処遇、さらには心身の健康を支える環境づくりにコミットして、自律した関係で会社と社員が共に成長していく企業をイメージしています。

 下の図に、当社の成長戦略TOP I2030の実現に向けた方針をまとめました。

 今、人的資本経営や人的資本開示が、日本を含む世界中で進められています。人的資本が、経営戦略の実現に向けて一番重要な鍵になっています。そのような中、われわれ中外製薬グループも「人が大事である」と考え、人に非常にフォーカスした経営戦略を掲げ、人事戦略・人財マネジメント方針を策定し推進しています。それが、個を描く・個を磨く・個が輝くという3つのテーマになっています。

 まず、社員一人一人が自分のキャリアを自ら描いて、未来の自己実現とTOP Iという会社の目標、ミッションをシンクロさせていく。そのような個を描くマネジメントを進めていきます。そして、個を磨くために社員の自主性や多様性を尊重し、社員が挑戦し、自律的に学び、専門性を自ら強化していく。そして最後に、何よりも人的資本で一番大切な、それぞれの社員(個)が輝く環境をつくっていきます。社員が自分の力を最大限発揮し、挑戦によって成長が実現できる環境を会社として整えていきます。

 このように、個を描く・個を磨く・個が輝くという3つのマネジメント方針に基づいて、人的資本さらには成長戦略の実現を目指していきたいと思っています。

 以上、ご清聴ありがとうございました。