日本の少子高齢化は、過疎地域拡大などの社会課題だけでなく、物流業界の人材不足や2024年問題にも直結している。また言うまでもなく、環境対応は世界的な重要課題だ。セイノーホールディングスは、こうした社会課題・業界課題をオープンイノベーションの手法で解決すべく、持続可能なラストワンマイルのプラットフォーム構築を進める。執行役員ラストワンマイル推進チーム担当の河合秀治氏が、事例を交えながらその取り組みを詳細に語る。

※本コンテンツは、2022年12月7日(水)に開催されたJBpress/JDIR主催「第2回 物流イノベーションフォーラム」の特別講演2「社会課題解決型ラストワンマイルの推進」の内容を採録したものです。

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社会課題と業界課題をどのように解決できるか

 セイノーホールディングスの創業者、田口利八氏は、輸送を通じて国の経済を支えるという「輸送立国」の精神で、国内初のトラック輸送事業を始めた。そのDNAをもって同社は、売上高6100億円弱、関連グループ会社91社、従業員約3万人の規模を誇る総合物流事業グループへと成長してきた。

 高齢先進国であるわが国では今、買い物弱者の増加や過疎地域拡大など、さまざまな社会課題が表出している。その中で物流領域においては、「ラストワンマイル」が大きな克服課題となっているのは周知のとおりだ。

 BtoBのイメージが強いセイノーグループにおいても、現在8社が「ラストワンマイル関連グループ会社」を形成して、この課題に取り組んでいる。GENie(ジーニー)は医薬品の即時配送、そしてLOCCO(ロッコ)は、EC事業者の商品の「置き配」、特にLCC(ローコストキャリア)宅配に取り組むなど、それぞれの分野において、ラストワンスマイルの領域を担っている。責任者であるセイノーホールディングス執行役員ラストワンマイル推進チーム担当の河合秀治氏は、2011年に立ち上がった食品配送の社内ベンチャー、ココネットの設立に従事し、複数の事業会社役員を兼務しながら、グループのラストワンマイルのプラットフォーム構築に従事してきた。

 河合氏は、ラストワンマイル領域での新規事業に取り組む自社のアプローチを「(業界課題 + 社会課題)× オープンイノベーション」と表現する。

「オープンにさまざまな企業・団体・サービスとつながり、物流の力を生かしながら、物流業界の課題、社会の課題を解決する取り組みを進めています」

 足元の物流業界を振り返ると、2018年度には物流業界の就業者数は約258万人となっており、全産業の約4%を占める。だがその後、コロナ禍によるEC化率の高まりとともに、宅配サービスの需要も急増する一方で、人口減少に伴うドライバー不足がいっそう顕在化してきている。しかも、トラック事業者の99%以上を中小企業が占めるという構造的問題があり、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限される「2024年問題」も目前に迫る。また営業用トラックで40%を切るという、積載効率の低さも課題だ。

「働き手が減る一方で、荷物の量は増えていくという状況の中で生産性を高めなければならないという、大変難しい課題が業界に横たわっています。こうした業界課題と、もう一方にある社会課題を、オープンイノベーションでどのように解決しようとしているか、今日はそれをお伝えしていきたいと思います」