あらゆる規制対応やコンプライアンス強化の流れが加速する中で、企業法務部にかかるプレッシャーは日ごとに大きくなっている。変化する経営環境に柔軟に対応していくため、リーガルオペレーションズの取り組みを進めている企業も多いだろう。大手総合商社である双日で執行役員 CCO 兼 法務、内部統制統括担当本部長を務める守田達也氏に、同社法務部が推進するリーガルオペレーションズとDXの取り組みについてお聞きした。

※本コンテンツは、2022年10月25日(火)に開催されたJBpress/JDIR主催「第3回法務・知財DXフォーラム」の特別講演1「双日法務部のLegal OpsとDX取り組みと今後の課題」の内容を採録したものです。

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業務効率化とノウハウの蓄積に資するリーガルオペレーションズ

 自動車やプラント、エネルギー、金属資源、化学品、食糧資源などグローバルでビジネスを展開している大手総合商社の双日。同社の法務部は、国内外での取引におけるさまざまな法律上の問題解決から、ビジネスモデル構築における契約書の検討、それにまつわるコンプライアンス施策の実行まで、幅広い業務を手がけている。

 現在、同社でCCO 兼 法務、内部統制統括担当本部長を務める守田達也氏は、「社長自らがDX推進における強いリーダーシップを発揮している」と話す。社長直轄の組織である「CDO室」が中心となって、既存ビジネスのデジタル化推進に取り組んでいる。

 またデジタル戦略を進めていく際には、事業モデルの変革も必要不可欠だ。そこでデジタル人財育成プログラムを導入するなど、人財の育成にも注力しているという。

 このように全社的にDX化、デジタル化、IT導入が推進されている中で、守田氏が所属する法務部はどのようなことに取り組んでいるのだろうか。

 現在66人が在籍する法務部は、7つの課から構成されている。「第一課」「第二課」「第三課」は、取引における契約書の検討や作成、交渉といった、いわゆる従来の法務系の仕事を担う部門だ。「コンプライアンス統括課」では、会社全体のコンプライアンス体制の構築やハラスメント問題といった、コンプライアンスに関わる問題の解決や処理を行っている。「物流コンプライアンス課」と「貿易管理課」では、従来のエクスポートコントロールや、関税コンプライアンスを担っている。

「当社の法務部は『法務系』と『コンプライアンス系』の2つの部隊で構成されています。そのため、これら2つの大きなファンクションにおいてリーガルオペレーションズとDXを図らなければならない状況です。さらに言えば、グローバルにビジネスを展開している企業ということもあり、海外との連携も重要な課題の1つです」

 近年、「リーガルオペレーションズ」という言葉を見にする機会が増えた。双日法務部は言葉がはやる以前から、業務の効率化や見える化、ノウハウの蓄積をどのように組織で進めていくべきかを模索していたという。

「法務業務は、どうしても属人化してしまいがちでノウハウが組織の共有物になりづらい側面があります。また、本部の中には中途採用の人や弁護士資格を取ったばかりの修習採用人材の人、あるいは海外の弁護士など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が在籍しています。そういう人々をまとめるためのリーダーシップを発揮するにはどうしたらよいのかという問題意識も、以前から存在していました。リーガルオペレーションズという1つの手法の中で、こういった課題をどう解決していくかがわれわれの大きなテーマです」