モビリティ社会のパラダイムシフトを受け、自動車部品メーカーのデンソーでは「環境」と「安全」を大義(パーパス)に据え、経営改革を推進してきた。事業のポートフォリオが変わり、仕事の進め方や働き方が変わる中で、いかに社員一人一人が自分自身の幸せをかなえられるかが重要になっている。同社の取り組みを、総務・人事本部執行幹部の原雄介氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年9月12日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「人・組織・働き方イノベーションフォーラム」の特別講演「『個人の成長と幸せ』『会社の大義と発展』の両者統合を目指すデンソー流キャリア自律の取り組み」の内容を採録したものです。

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質の高いデンソーを目指して

 先進的な自動車技術、システム・製品を提供する自動車部品メーカーのデンソー。同社では、カーボンニュートラルを始めとしたモビリティ社会が直面するパラダイムシフトを踏まえ、2030年に向けて「環境」と「安心」で社会に貢献し、共感される企業を目指すという長期方針を策定した。

 しかし、2020年に直面した新型コロナウイルス感染症のまん延と、重大な品質問題等によって経営危機に直面。質の高いデンソーへと生まれ変わることを目指すため、2020年に経営改革プラン「Reborn21」をスタートした。環境・安心の大義(パーパス)をそれぞれ、「『世界の空』を技術できれいに」「技術で『安心』で満たされた社会をつくる」と再定義。これにもとづいた事業戦略を立て、同時に社員の意識・行動変革の取り組みを行っている。具体的にどのようなことに取り組んでいるのか、デンソーの総務・人事本部執行幹部の原雄介氏は次のように紹介する。

「環境としては、ものづくり、モビリティ製品、エネルギー利用という3つの視点で、2035年までにカーボンニュートラルを目指します。また、安心では、交通事故死亡者ゼロ等を目指し、安心できる社会の構築へ貢献していきます。『大義への貢献』と『事業の成長と収益』という2軸で事業ポートフォリオの変革を開始しました」

 以下のチャートの横軸はCO2排出量、縦軸は収益性を表している。成熟事業は縮小・改善を進め、CASE等の成長事業は収益力を強化。そして、新事業は大義への貢献と収益性を両立。これにより、2035年までにグループ全体でカーボンニュートラルを達成し、企業の成長も両立させる計画だ。

「Reborn21」は、品質の復権をベースに、事業戦略、仕事の進め方、人・組織の変革から成る。大切なのは、大義にもとづいて社員一人一人が意識・行動を変えることだ。

「それに向けた取り組みの一つが『変革の日』です。社長から新入社員まで、社員全員が1日業務の手を止めて、職場単位で、課題とアクションを議論する日を設けました。一人一人が会社の大義と自分の仕事をつなげ、自分自身が取るべき行動について明確にしていきました」

 2020年と2021年に1回ずつ、計2回実施された「変革の日」も通じ、徐々に変化が出てきたという。