営業領域のDX推進については、否定的な意見がつきまとう。投資コストに見合うのか、売り上げ拡大に結びつくのか。疑問を持ったまま、営業モデルを一新できずに立ち止まっている企業は多い。単にデジタルツールを導入するだけでは、本質的な変革はできない。営業改革支援コンサルティングを手がける、グローバルインサイトの水嶋玲以仁氏が、営業DXの必要性・有用性を改めてひもとき、自社の営業モデルを見極めながら導入していくステップを具体的に解説する。

※本コンテンツは、2022年7月1日(金)に開催されたJBpress/JDIR主催「第5回 Marketing & Sales Innovationフォーラム」の特別講演2「営業DXの導入方法〜営業モデルを見極め、価値ある変革へ〜」の内容を採録したものです。

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営業DXのキーワードは「社内分業」「標準化」「顧客データ活用」

 営業DXとは何か。日本企業のインサイドセールスおよび営業改革支援コンサルティングを手がける、グローバルインサイト合同会社CEO水嶋玲以仁氏は「デジタルツールを活用して営業モデルそのものを変革すること」と定義する。それもツールの導入のみに頼るのではなく、新しい考え方にもとづいて、中長期的な目線で計画立案・実行していくことが重要だという。

「今、モノ売りが非常に難しくなり、コト売りや体験を提供する必要性が高まっています。一方で、少子高齢化による労働人口の減少で人材確保がより困難となり、さらにコロナ禍で、従来の対面での営業スタイルは通用しなくなっているのです」

 課題解決型の高度な営業活動が求められる反面、こうした制約はますます強くなり、しかもデジタルツールを使いこなせるか否かが、成果に大きな差を生む時代になっている。営業担当者とて、変革なしではどうにも生き残れない。そこに水嶋氏は、営業DXを進めるためのキーワードを3つ挙げる。「営業プロセスの社内分業」「営業プロセスの標準化」「顧客データを活用した営業活動」だ。

 まず「営業プロセスの社内分業」では、①潜在的な顧客との接点を創出するマーケティング ②接点を維持して案件を創出するインサイドセールス ③提案やクロージングを行うフィールドセールス ④アフターフォローを行うカスタマーサクセスがある。この各フェーズを、それぞれ専任の担当者が分担することで専門性を高め、質の高い営業活動を実現する。そうすることで、ポジションにおける役割と機能が明確になり、リソースの確保や置き換えが可能になるという効果もある。

 次に「営業プロセスの標準化」では、営業をジョブ型雇用にシフトして役割を明確にし、各部門の中でノウハウを蓄積してドキュメント化を図る。これによって、人材の流動性が高くても常に業務を継続できる体制を構築する。

 3つ目の「顧客データを活用した営業活動」では、SFA(Sales Force Automation=営業支援管理システム)、CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理システム)、MA(Marketing Automation=マーケティング活動の自動化システム)などのデジタルツールを活用する。顧客データを一元管理し、誰もがリアルタイムで情報を確認できるようにすることで、情報の分断を防ぐのが狙いだ。また、それぞれの営業活動のステータスをモニタリングして、ステップごとの管理評価を行い、過去データから受注・失注の要因分析を行ったり、新たな提案方法を検討するといったことも可能になる。