DXの推進が叫ばれる中、企業におけるIT部門への期待は年々大きくなっている。経営的視点を持ち、ビジネス部門から信頼されるIT部門へと変革していくためには何が必要なのか。積水化学工業で情報システム部長を務め、IT部門の構造改革やIT基盤の高度化・標準化、ITガバナンスの改革などに取り組んできた、IIBA日本支部代表理事の寺嶋一郎氏に、IT部門に求められる役割について聞いた。

※本コンテンツは、2022年6月27日(月)に開催されたJBpress/JDIR主催「第13回DXフォーラム」の特別講演2「DX推進におけるIT部門に求められる役割」の内容を採録したものです。

動画アーカイブ配信はこちら
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71648

デジタル技術を活用して変化に対応できる企業に

 コロナ禍を経て、いよいよ世界は「アフターデジタル」の局面を迎えている。「デジタルディスラプション」が起きやすい時代がすぐそこまで来ており、コロナ以前から「DX」や「IT」に求められていた取り組みを想定よりもさらに加速させていく必要がある。そうしなければ時代の潮流に取り残されてしまうのは、間違いないだろう。

 国内のDX推進状況は、大きな危機感を持っている企業が取り組みを促進させつつある一方で、なかなか思うように進められずに苦労している企業も少なくない。一般社団法人IIBA日本支部代表理事の寺嶋一郎氏は「デジタル技術はあくまでも手段」と語る。その手段を駆使して、どのようなDXを行うのかを今一度考えなければならないという。

「DXの本質は、デジタル技術を活用して変化に対応できる企業を目指すことにあります。VUCAと呼ばれる時代を生き抜くためにも、同時多発的に、さまざまな形で出現しているデジタルの新技術を活用することは必須です。ビジネスプロセスをデジタル化してアルゴリズム化する、またはビジネスモデルそのものを変えていく。このようなことをやっていかなければ変化に追従できません」

 一方で同氏は、「経路依存性」の問題についても指摘する。これまでの成功体験や仕組み、制度に縛られ、思うように変革に向かうことができていない日本企業は多い。目指すべきは、経路依存性から脱却し、組織、制度、人のマインドセットなど、企業を丸ごと変えていく「CX(コーポレートトランスフォーメーション)」に取り組むことだ。

「ドラッカーは『予測できない未来なら、ありたい未来をつくり出そう』と提言しています。これはいわゆるバックキャストで決めていくということです。『パーパス経営』がその最たる例なのではないでしょうか。いまこそ企業の志を社員全体で理解し、同じゴールに向かって進むべきです。DXの本質は『デジタルを前提として変化する』こと。先が見えない時代でも、柔軟かつスピーディーに対応できる企業へと変革していかなければなりません」