森ビル取締役専務執行役員の小笠原正彦氏(窓の外に見えるのは2023年竣工の虎ノ門・麻布台プロジェクトの高層タワー)

街と人をつなぐデジタルプラットフォーム

 森ビルが東京の都心部で管理・運営するヒルズといえば、オフィスや住宅、文化などの都市機能を集約したコンパクトシティのモデルとして知られている。開業時期をさかのぼると、1986年のアークヒルズを皮切りに、2003年の六本木ヒルズ、2014年の虎ノ門ヒルズ森タワー、来年2023年には虎ノ門・麻布台プロジェクトの竣工も控えている。

 そして、各ヒルズを横断するデジタルプラットフォームとして昨年4月から稼働したのが「ヒルズネットワーク」だ。同ネットワークは、ヒルズで働くオフィスワーカーやヒルズ敷地内の商業施設の来訪者、ヒルズのレジデンス棟の居住者などを対象に、さまざまなサービスの提供をオンライン上で提供するもの。より便利で、より豊かな都市生活・顧客体験の実現が狙いだという。

 ヒルズネットワーク開発の経緯について、森ビル取締役専務執行役員でタウンマネジメント事業部も担当する小笠原正彦氏はこう語る。

「ヒルズ内の商業施設利用者であればヒルズカードを持っていて、レジデンス棟にお住まいの方なら居住者限定サイトがあり、オフィスワーカー向けにも情報サイトの『WORKERS BOARD』があります。

 ただ、これらのサービスそれぞれがつながることなく、機能別に分断されていた実態もありました。そこで、居住者もオフィスワーカーも商業施設利用者も分け隔てなくシームレスに、かつタイムリーに情報提供や特典付与をしていくためにヒルズネットワークを発案したわけです」

 従来は居住者、オフィスワーカー、来街者それぞれのシステムで異なるログインIDが必要だったが、新たに投入した「ヒルズID」への集約で解消し、「ヒルズアプリ」の開発によって利用者一人一人に最適化されたヒルズ(=街)のワンストップ情報提供が可能になった。これによって森ビルは顧客属性を横断的につかむことができ、より良いサービス構築のための顧客解像度を上げることができたといえる。

 ヒルズネットワークは、ヒルズIDやヒルズアプリの提供開始をフェーズ1(2021年4月)とし、新規サービスや機能の拡充としてフェーズ2(2022年9月)、そして新規プロジェクトへの実装をフェーズ3(2023年)と位置付けている。新規プロジェクトとは冒頭で触れた来年開業予定の虎ノ門・麻布台プロジェクトや虎ノ門ヒルズ ステーションタワーを指す。

「ヒルズネットワーク(都市OS)」のイメージ
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