(右)TIS株式会社 執行役員・DX推進本部本部長 伊藤浩人氏。1987年長銀コンピュータサービス(現TIS)入社、銀行やクレジットカード会社のシステム開発・システム企画など金融業界の多数のプロジェクトに従事。2019年、ヘルスケアサービス事業立ち上げを経て、2022年より現職。(左)TIS株式会社 DX推進本部DXデザイン室室長 市田真也氏。2000年東洋情報システム(現TIS)入社。金融業界などの複数のプロジェクトに従事した後、2009年よりクラウドビジネスの立ち上げを実施。2019年より情報システム部にてゼロトラスト導入などさまざまな社内システム改革を行った後、2022年より現職。

 ITに関するコンサルティングやシステムインテグレーション、サービスを提供するTISインテックグループ。2021年から23年度までの中期経営計画を「DX提供価値の向上による構造転換の加速『Be a Digital Mover 2023』」と位置付けている。具体的には、金融包摂、都市への集中・地方の衰退、低・脱炭素化、健康問題といった4つの社会課題を、デジタル技術を活用して解決を目指していく。社会課題解決型サービス事業では、2021年3月期の380億円から2024年3月期で500億円の売上高を目指す。

TISインテックグループがDXで解決を目指す4領域
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 DXは、内部DX、事業DX、社会DXの3つに分けて捉える。内部DXは社員が仕事に集中できる環境を作り、社員の成長とグループの成長を促す「社員のため」のDX、事業DXは顧客が取り組む課題をデジタルで支援する「顧客のため」のDX、社会DXはDXを通じて社会課題を解決し、グループが目指す未来社会を実現する「社会のため」のDXとなっている。

 2022年度は、まずは起点となる内部DXに注力する。自社内で試行錯誤した過程で得られた成果やノウハウを、事業DXや社会DXに活用していく方針だ。

TISインテックグループのDX戦略イメージ
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 事業DXでは、顧客の相談にのるDXコンサルタントを250人から500人超にまで拡充する。顧客の中には、これからDXに取り組む段階で「DX化したいけれど、何から取り組み始めたらいいのか?」という状態の顧客も少なくない。業界によって求められるDXやレベルは異なるため、DXコンサルタントは業務にまで入り込んで業務やシステムの整理をするところから始めていく。

 グループの強みでもあるデジタル決済やERP(Enterprise Resources Planning)を生かして顧客も気付いてない潜在的課題を見つけ出すことはもちろん、「業界他社ではこんなこともDXで行っているんですよ」と情報提供することで、共創促進を行っていく。このDXコンサルティングを強化することで、インテグレーション・ITプロフェッショナル、サービス、BPOと事業全体のバリューチェーンを高度化することを目指す。

 執行役員でDX推進本部長を務める伊藤浩人氏は、自社が目指すDX像についてこう語る。

「社員が何もしなくても変化が起きることが理想なので、特に内部DXでは『何かを実現させるために社員に何かをしてもらう』ことは限りなくゼロにしたいと考えている。例えば、データ利活用するからといって、新システムへのデータ入力の手間が増える・・・といったことはしない。IT技術を活用して、人間に負担をかけない仕組みづくりを行いたい」