コロナ禍を契機に急速に広まったテレワークにより、人々は直接会わずとも画面越しにコミュニケーションを取ることが当たり前になってきた。ただ、効率的にビジネスを進められる一方で、心の距離が埋まらないジレンマが生じている。対面コミュニケーションでしか補えないファクターが、企業の経営戦略にも影響を及ぼしている。本稿では、ビジネス書から小説まで数多くの著作で知られる、中谷彰宏事務所代表取締役社長の中谷彰宏氏が、コロナ禍の経営戦略におけるコミュニケーションの重要性について語った。

※本コンテンツは、2022年3月4日に開催されたJBpress/JDIR主催「第1回 コミュニケーション改革フォーラム」の特別講演2「経営戦略としての3つのコミュニケーション改革」の内容を採録したものです。

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テレワークが当たり前の時代。コミュニケーション力が企業の命運を分ける

 「働き方改革」「多様化の時代」が叫ばれる中、新型コロナウイルスという災厄が加わり、企業にはさらなるビジネス変革への取り組みが求められている。とりわけコミュニケーションの在り方は、対面を前提としたコロナ前と比べて大きく変わりつつある。

 商品力や技術力の高さで勝負していた時代には、コミュニケーションはあまり重視されてこなかったともいえる。それどころか、ITやAIの発達で効率化が進むにつれ、無駄なコミュニケーションは排除されていく傾向さえあった。だが、コロナ禍により多くの企業でテレワークが進み、顧客との商談もオンラインが主流となった。そんな今だからこそ、コミュニケーションの重要性が改めて見直され始めている。会社の成長そのものがコミュニケーションの量や質に左右されると言っても過言ではない。中谷氏は、企業におけるコミュニケーションの重要性について次のように強調する。

「企業経営において、マーケティングとブランディングは欠かせません。マーケティングは、お客さまが何を求めているかを理解し、それに合わせた商品やサービスをつくることが大切です。これに対してブランディングは、売り手やつくり手が商品やサービスを通して何を実現したいかを分かってもらう必要があります。ベクトルは異なりますが、いずれにおいてもコミュニケーションが重要な鍵となるのは変わりません」

 対面であれば、相手のちょっとした反応や呼吸を見ながらニーズを探れるが、オンラインでは相手の内面に隠れている気持ちを細かく読み取ることは難しい。だがこの一見不利な環境であっても、オンラインでのコミュニケーション能力に秀でた企業や人材には「競争優位に立つチャンス」と中谷氏は示唆する。

「テレワークの時代では、社員もお客さまもコミュニケーションを通じた心のつながりを求めています。オンライン上であっても、双方向のコミュニケーションを取りながら、巧みに感情のキャッチボールを行えることが重要なのです」