家具・ホームファッション専門店チェーンのニトリは情報システムをITベンダーに頼らず、ほぼ自社で内製するという小売業としてはかなり特異な存在だ。それだけにDX(デジタルトランスフォーメーション)にも独自の見解を持つ。ニトリホールディングスの上席執行役員 CIO(最高情報責任者)で、今年4月に設立されたニトリデジタルベースの社長を兼務する佐藤昌久氏が「ニトリが考えるDX」について語る。

※本コンテンツは2022年6月30日(木)に開催されたJBpress/JDIR主催「第8回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅱ「変化を支えるもの~内製に拘り続けて~」の内容を採録したものです。

動画アーカイブ配信はこちら
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71214

製造・物流・販売のバリューチェーンを自前のITシステムで支える

 ニトリグループ は小売業をメインに法人事業、リフォーム事業をはじめ、保険事業、飲食事業など多様な事業を展開。また業務領域も幅広く、商品開発から、実際に製品を製造し、日本に輸入し通関業務を経て、物流センターに送り、店舗で商品を販売して、お客さまの下に届けるという非常に広い範囲をカバーする業務のつながり、いわゆるバリューチェーンを自前で手掛けるというユニークなビジネスモデルを有している。

 同社は1967年に北海道の家具店として1号店をスタート。その後、55年かけて約800店・約8000億円の売上規模に成長した。現在、国内では「ニトリ」の他に、インテリア雑貨の「デコホーム」、経営統合したホームセンターの「島忠」、アパレルの「Nプラス」などを展開。海外ではアメリカ、中国、台湾で今年オープンしたASEAN(東南アジア諸国連合)地域でも出店を開始している。

 ニトリグループは「住まいの豊かさを、世界の人々に提供する」というロマン、「2032年に3000店・3兆円を実現して『世界の暮らし』提案企業になる」というビジョンを掲げている。このロマンとビジョンへの道筋をIT側の視点で見たのが上の図だという。「3000店、3兆円」という規模を実現するためには、フォーマット(売り方)を拡大し、グローバル展開(海外出店)を加速、バリューチェーンを効率化することも必要だ。お客さま接点の高度化も求められる。

 その基盤となるのがサプライチェーンマネジメントやデータドリブン(データ駆動)などの新技術の導入で、これらがロマンとビジョンの実現をサポートする。「このITの世界観はトップを含めた全社で共有している」と佐藤氏は話す。