(写真:ロイター/アフロ)

 米調査会社ガートナーが7月27日に公表した最新リポートによると、2022年における世界の半導体収益は前年比7.4%増にとどまり、21年の伸び率26.3%を大きく下回る見通し。従来予想の13.6%増から下方修正した。

市場は低迷期に突入

 ガートナーによると、半導体不足は緩和されつつあるものの、市場は低迷期に突入している。この状況は23年まで続くと同社はみている。23年の世界半導体売上高は前年比2.5%減少するとしている。

 同社のバイスプレジデント、リチャード・ゴードン氏は「半導体の末端市場、とりわけ消費者支出に左右される分野では、すでに弱さが現れている」と指摘。「インフレの進行や増税、金利上昇に加え、エネルギー・燃料価格の高騰が消費者の可処分所得を圧迫しており、パソコンやスマートフォンなどの電子機器への支出に影響を及ぼしている」(同氏)

 同社の推計によると、22年の世界半導体収益は6392億ドル(約86兆4800億円)で、従来予想から367億ドル(約4兆9700億円)減る見通し。「22年は経済状況が年間を通して悪化し、特にパソコンやスマホなどの消費者分野の低迷が、半導体メモリーの需要低下につながる」とみている。

 ガートナーの別のリポートによると、22年4~6月の世界パソコン出荷台数は7200万台となり、前年同期から12.6%減少した。これは過去9年間で最も急激な落ち込み。こうした状況は、世界の全地域を覆う地政学的、経済、サプライチェーン(供給網)の問題によってもたらされたという。

 これに伴い、22年のパソコン向け半導体の収益は5.4%減少する見通し。スマホ向け半導体の収益は3.1%増にとどまり、21年の24.5%増と比較し大幅に減速する見通しだ。

PC、タブレット、スマホ、いずれも減少へ

 別の調査会社である米IDCは、22年のパソコン世界出荷台数が前年比8.2%減少し、3億2120万台にとどまると予測している。タブレット端末も振るわず、世界出荷台数は同6.2%減の1億5800万台になるとみる。

 また、22年の世界スマホ出荷台数は前年比3.5%減の13億1000万台で、2年ぶりに減少する見通し。ウエアラブル機器の22年1~3月の出荷台数は1億530万台で、前年同期から3.0%減少。IDCが統計を取り始めて以来初めて減少に転じた。

データセンターや自動車分野は回復

 その一方で、データセンターのサーバーなど法人向け市場は回復力がある。ガートナーによると、企業がクラウドインフラに積極的な投資を行っていることから、データセンター向け半導体の収益は22年に20%増加する見通し。

 また、自動車エレクトロニクスの分野も引き続き好調で、今後3年間2桁成長が続くという。電気自動車(EV)への移行や自動運転技術の導入に伴い、車載半導体の数が増加の一途をたどっている。現在、車両1台に搭載される半導体は、金額ベースで平均712ドル(約9万6300円)だが、25年には931ドル(12万6000円)に上昇すると予測している。

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