コマツ 執行役員 スマートコンストラクション推進本部長の四家千佳史氏

 IoTという言葉が浸透する以前から、建設業の現場における課題解決にICTを利活用するなど、IoTの先駆者的存在であるコマツ。2015年には、デジタルを利用したさらなる生産性の向上を目指し、スマートコンストラクション推進本部を設立。2020年には、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定するDX銘柄企業の中から、“デジタル時代を先導する企業”として「DXグランプリ2020」に選ばれるなど、デジタルへの取り組みが高く評価されている。スマートコンストラクション推進本部設立時に本部長に就任し、執行役員も務める四家千佳史氏に、コマツのDXへの取り組みを聞いた。

課題解決のために行ったことがDXだった

――ご経歴を教えてください。

四家 私はもともと、プログラムを書くことやコンピューターを使うことが好きでした。ですが、ITをビジネスにするのではなく、ITを徹底的に業務に活用する会社をつくりたいと思い、29歳のときに株式会社BIGRENTALという建設機械のレンタル会社を設立しました。今でいうところのDXだと思いますが、デジタルを使って変革するのではなく、ゼロからデジタル技術を使うことに興味があったのですね。

 2008年に、コマツの子会社であるコマツレンタル株式会社と経営統合し、代表取締役社長に就任した後、2015年2月、コマツにスマートコンストラクション推進本部が新設されるにあたって本部長に就任しました。昨年7月には、スマートコンストラクション部門の一部を分社化した株式会社EARTHBRAINを発足しました。現在はそちらの会長職も兼任しています。

――コマツがDXに取り組んだきっかけを教えてください。

四家 コマツは早い時期からIoTに取り組んできました。例えば、1998年には「Komtrax」と呼ばれる機械稼働管理システムを開発し、2001年からコマツが販売する全ての建設機械に標準搭載しました。

 また、近年では、当社のお客さまである建設業での労働力不足が深刻な問題となっています。建設業は社会インフラを担っていますから、非常に大きな社会課題ですよね。コマツは労働人口を増やすことはできませんから、労働生産性を上げるという点で尽力しようと考えました。

 そこで、われわれは、2015年に「スマートコンストラクション」というソリューションをスタートさせました。これはお客さまの現場のあらゆるプロセスをデジタルでつなぎ、安全性と生産性を上げることを目的としています。多くのデジタル技術を使って行いますので、結果として、お客さまのDXをコマツがご支援する形になりました。

 逆にコマツは、これまではモノづくりを中心としたビジネスだけだったのが、お客さまのオペレーションを最適化するための手段、例えばソフトウエアなどの開発も必要になった。つまり、お客さまのDXをご支援することが、コマツにとってのDXでもあったということです。コマツは、IoTやDXに取り組むことを目的としていたわけではなく、課題解決のために行ったことが、後にIoTやDXと呼ばれたということなのです。

――「スマートコンストラクション」を推進することになったきっかけというのは。

四家 当社は、建設業の労働力不足解消のために、半自動制御機能を持ったICT建機を開発しました。ところが、建機の効率を上げるだけでは、現場全体の労働生産性は上がらないのですね。建設現場には測量、計画、施工、検査とあらゆるプロセスがあり、例えば、どれだけ性能のよい建機があっても、前後のプロセスで土を運ぶダンプトラックの手配ができなければ、作業が大きく滞ってしまうわけです。

 このように建設現場のプロセスは全てつながっていますから、一部分だけを最適化しても意味がなく、全体における課題を見つけて最適化を図る必要があるわけです。当社は建機以外の領域をカバーしていませんでしたが、われわれの製品だけでは解決できない課題がたくさん見つかったことで、お客さまのオペレーション全体を見て、自社が関与していないところの課題も解決していこうという方向に変わりました。施工中のお客さまの困りごとは、全部われわれが一緒に解決していくのだという思いを込めて「スマートコンストラクション」をスタートさせました。

――自社製品以外のところもフォローするというのは、かなりのチャレンジですよね。

四家 そうですね。建機という視点から離れて、お客さまの現場を考えたことがない状態ですから、当然、お客さまの課題も分からない。「スマートコンストラクション」開始の発表会では、“きっとお客さまは、こういうことを望んでいるのではないか”という在りたい姿を想像し、コンセプト映像を制作して臨みました。まずは、「こういった安全で生産性の高い現場を創造するために、お客さまと一緒に取り組んでいきたい」という意思表明からのスタートでした。

 何も分からないところから始めた分、常に「お客さまの課題解決のためには何が必要か」という考えに集中でき、既存の製品の技術やプロセスに捉われることなく改革を行えたのはよかったと思います。また、DXなど既存のものを変える際に障壁となりがちな抵抗や制約もなく、意外に推進しやすかったところはあります。

――2015年にスマートコンストラクション推進本部が設立された当初は、何人くらいの組織だったのでしょうか。

四家 20、30人程度だったと思います。スマートコンストラクション推進本部は、企画・開発や推進サポートに特化している部門であり、また、ソフトウエアやプラットフォーム開発などはパートナー会社に委託していましたから、ピーク時でも所属していたのは70人程度ですね。

 一方で、お客さまの現場の課題を見つけ、いろいろなソリューション提案を行うコンサルタントと呼ばれる部隊があります。現在、そのポジションを担える人材教育を行っており、800人ほどの社員が対象となっています。