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 「リテールDX講座」では、リテールDXをビジネスモデル・イノベーションと捉え、ビジネスモデルを構成する6つのブロックについて、各回1ブロックを取り上げていきます。

 第4回では、業務プロセス・イノベーションを取り上げます。業務プロセス・イノベーションとは、顧客視点に基づき、小売業の「活動システム」に焦点を当てた3つの業務プロセス・イノベーションを意図した概念です。

 本回では、まず、伝統的小売業と小売DXに取り組む企業を比較しながら、「商品供給システム」「業務システム」「組織内・組織間関係」について説明しています。

 次に、小売企業が、業務プロセス・イノベーションに取り組む際に重要になる(1)バリューチェーン、ディマンドチェーン、スラック、ダイナミック・プライシング、(2)システム革新、データドリブン志向、(3)エコシステムという概念を理解する必要性について説明します。

 小売企業は、川上であるメーカー基点のSCM志向を踏まえつつ、一方では、顧客接点(店舗、EC、スマホ上のアプリ)から得られる顧客のニーズや不満を解消する必要があります。矢作(2014)が主張している「小売事業モデルの革新論」における組織内関係(「店舗運営」と「商品調達」、「商品供給」の関係)だけに閉じこもることなく、組織間関係(「取引先企業」である卸売業、メーカーとの協業)にまで視野を広げていくディマンド・チェーン・マネジメントの発想が今後、DXを推進していく上で必要となるわけです。

 また、小売DXを推進していくためには、小売企業は、OMOにおける「エコシステム」上において、自社がプラットフォーマー、サービサー、メーカーのどの位置を占めるのか、ポジションニングを明確化する必要もあります。

 第5回以後は、収益フォーミュラ・イノベーション、ビジネスモデル・イノベーション、そしてこうしたイノベーションがもたらす競争優位について解説していきます。

小樽商科大学 近藤公彦
神奈川大学  中見真也