日本電気株式会社(以下、NEC)は、2016年以前のまだDXという言葉が一般化する前から、DXの取り組みを進めている。既に基幹システムの刷新とクラウド移行を進め、データ活用基盤も整備、組織と人の改革も着実に浸透してきている。その中で2021年4月に「Transformation Office」を立ち上げ、2022年度からは社内DXに関するリソースを集約したコーポレートトランスフォーメーション部門を新設し、さらなるDXの推進に取り組んでいる。そのNECが進めてきたDXと、その中で直面したことを、コーポレートトランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィスの一森久美氏、カルチャー変革部の森田健氏が振り返る。

「働きがい」を感じられる仕組みでDXをさらに加速

 NECでは、以前から継続的な改革に取り組んでいる。2016年にはデジタル経営に向けて自社およびグループ会社の全基幹システムを刷新し、2018年には社員の力を最大限に引き出す改革「Project RISE」を開始。人事制度改革、働き方改革、コミュニケーション改革の3つの軸で改革を推進してきたが、働き方改革では、社員一人一人のパフォーマンスの最大化に大きく方針転換していることが特徴となっている。

 NECではDXについて「自社内のDX」「お客様のDX推進支援」「社会全体のDX」の3つに定義している。

 自社内のDX、つまりNEC自身のDXについては前述の取り組みに加え、2025中期経営計画の達成とさらなる成長を目的に、経営・事業・社員の観点によるコーポレート・トランスフォーメーションを加速。そのために、2021年に「Transformation Office」をCEO直下に立ち上げ、2022年4月よりコーポレートトランスフォーメーション(CX)部門に発展させている。

 ここでは現在、大きく6つの考え方に基づき、約230の企業変革プロジェクトが進んでいる。6つの考え方とは、①デジタルワークプレイスによりさまざまな働き方を実現し従業員の働きがいにつなげる「働き方のDX」、②End to Endで業務プロセスの最適化を図りデータドリブン経営を推進する「基幹業務のDX」、③社内システム運用などオペレーショナルな業務の高度化・効率化を図る「運用のDX」、④従業員のIT体験の高度化する「エクスペリエンス」、⑤データの標準化・一元化により意思決定のスピードアップを図る「One DATAプラットフォーム」、⑥クラウド化、グローバル化に最適なシステムの実現を図る「モダナイゼーション」である。

社内DX変革全体像
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「Transformation Officeは、コーポレートスタッフの機能の中に立ち上げた組織で、新たな軸を追加した形になります。各チーフオフィサーと連携しており、CIO兼CISOである小玉が統括しています」と話すのは、NECコーポレートトランスフォーメーション部門 DX戦略統括オフィスの一森氏。「さらに現在は、社内の企業変革を担う組織を集約したCX部門となり、より積極的な変革を進めています。プロジェクトの数は大小さまざまですが約230にのぼり、全社の取り組みとしてトランスフォーメーションを実現し、ビジネスアウトカムの創出を最終目的としています」

 6つの考え方のもと進んでいる約230の企業変革プロジェクトの中の代表的な取り組みが「End to End(E2E)データドリブン経営」「コーポレート機能リデザイン(組織・人)」「Smart Work 2.0」「次世代デジタル基盤改革」「グローバルパートナーとの連携強化」だ。これらのために「レジリエンス(強さ)×アジリティ(しなやかさ)」を基本コンセプトとし、強さを引き出すために競争力の源泉であるデータの持つ価値を高めていくことが必要としている。