ファーウェイの2021年度の売上高は6368億元で前年比28.6%減少したものの、純利益は1137億元で約76%の増加を実現した。 写真:ロイター/アフロ

 4月下旬ごろから中国のネット上である写真が話題を呼んでいる。2020年と現在、中国テック企業の時価総額の合計と、アップルの時価総額との差が拡大していることが示されているという。

 前回の寄稿でも触れたが、ここ2、3年、中国テック企業の時価総額もユニコーン企業の増加も芳しくない状況だ。

 なぜこうなったのだろうか?

 規制強化による影響が大きいものの、中国におけるネット人口の飽和に伴うユーザー増加の限界やサービスの同質化、政治対立による海外進出の挫折などの要因も無視できない。各社にとっては、成長の転換点に立ち、従前の競争力が弱まっている時期に厳しい規制をかけられたことで、まさに弱り目にたたり目である。

 では、これらの要因は変わっているのだろうか?

規制緩和の動きが出ている

 規制に関しては、実は昨年の後半以降、ブレーキが緩み、緩和の動きが徐々に出ている。

 2020年12月に行われた中央経済工作会議では、「反独占が重要なタスク」と明言したが、昨年12月の同会議では「資本に対する信号機機能を設置する」へと変わり、それまでの赤信号ばかりではなく、青信号もあるとの意味合いから事実上の規制緩和に舵を切った。

 直近では、4月末に開催された中央政治局会議ではテック企業に関連する政策動向のさらなる緩和がみられた。同会議では、目下の経済情勢をはじめ、5.5%前後の成長目標とゼロコロナにこだわる姿勢の表明や、内需拡大のためのインフラ建設の強化、不動産およびテック企業関連規制の緩和を明らかにしている。とりわけ、テック・ネットビジネスに関しては、ここしばらくなかった「支持(サポート)」という言葉が目立ち、大きな変化が現れたと言える。

 さらに、5月17に北京で「デジタル経済の持続可能な発展の推進」をテーマとした政治協商会議(共産党や各民主党派、各団体・業界の代表で構成される組織)があり、大手検索エンジンであるバイドゥのCEO李氏をはじめとするIT企業の関係者が多数参加した。習近平国家主席の経済ブレインである劉鶴副首相は「プラットフォーム経済を支持し、プラットフォーマーやデジタル分野の関連企業の海外での上場を支持する」と、規制緩和の姿勢を改めて強調した。

 しかし一方では、規制緩和でテック企業の成長への期待が再び高まっているとはいえ、各社にとっては弱まりつつあった競争力から脱皮し、新たな競争力の獲得が喫緊の課題である。