投票に並ぶ人々(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムの米ニューヨーク市スタテン島の物流施設で、同社として米国初となる労働組合の結成が決まった。この歴史的転機となり得る出来事をみて、米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストらは、今後の状況の変化に応じてアマゾンのコストが押し上げられるだろうと指摘した。米CNBCが4月4日に報じた

最低時給3700円など要求

 「JFK8」と呼ばれるニューヨーク市スタテン島の物流施設では、従業員や元従業員らでつくる団体「アマゾン労働組合」が主導し、全米労働関係委員会(NLRB)の管轄の下、組合結成の是非を問う投票が2022年3月25日~30日に実施された。

 22年4月1日の開票で、投票総数約4800票のうち、賛成票が2654票で反対票2131票を上回り、労組結成が可決された。

 アマゾン労働組合は、JFK8で働く労働者の最低時給を現在の18ドル(約2200円)強から30ドル(約3700円)に引き上げることや、休憩時間の延長、休暇制度の改善などを求めている。

8300人働く物流施設、時給上昇で営業費用250億円増

 モルガン・スタンレーのアナリストが4月4日にクライアント向けに出した調査ノートによると、アマゾンが今後同物流施設で時給を29ドルに上げた場合、23年の営業費用が2億300万ドル(約250億円)増える可能性がある。

 この金額はアマゾン全体の費用と比較するとわずかだ。だが同社では高インフレや労働市場の逼迫で、営業費用がかさんでいる。例えば21年10~12月期の営業費用は前年同期比13%増の1339億5200万ドル(約16兆4000億円)。伸び率が売上高(9%増)を上回った。また21年の営業費用は4449億4300万ドル(約54兆4800億円)で、前年比23%増だった(アマゾンの決算資料)。