WGSN社のプレゼン資料より「ダイレクト・トゥ・アバター・コマース」のイメージ 〔出所〕筆者撮影

ライブコマース:QVCとエイボンが見いだした成功の秘訣

(右から)エイボンのイベント&経験ディレクターのジェイソン・シガラ氏、QVCおよびHSNチーフマーケティングオフィサーのブライアン・ベグラー氏、コアサイトリサーチ社 CEO デボラ・ウェインスウィグ氏 〔出所〕筆者撮影

 ライブストリームは米国でも急速に市場規模を拡大している。コアサイトリサーチ社によると、2021年末までに110億ドル、2023年までには250億ドルに成長する見込みで、この領域をリードする中国では2021年に3000億ドル市場ともいわれている。コアサイトリサーチ社 CEO デボラ・ウェインスウィグ氏はパネル討論で登場したが、そこに招かれたのはライブショッピングの老舗とも言えるQVCおよびHSNチーフマーケティングオフィサーのブライアン・ベグラー氏と、1年前にライブショッピングを導入したエイボンのイベント&経験ディレクターのジェイソン・シガラ氏だった。

 QVC、HSNは40年前に、ショッピングにテレビを通じてライブ要素を導入し、「自宅で買物を楽しむ」という革新を起こした。ベグラー氏は「しかし、ライブショッピングは自宅だけでなく、いつでもどこでも買物ができるようにし、ショーのホストと視聴者との関係性を新たに構築し直している。視聴者はホストの話によりオーセンティシティ(信憑性)を求めており、商品やアイデアを語る人たちをもっと身近に感じたがっている」とテレビショッピングとの違いを指摘した。その上で「ライブショッピングはその関係性を1対1から1対多数に拡張できる。私はライブストリームはEコマースが成長するための次世代のプラットフォームだと考えている」と見解を述べた。

 エイボンでは長年にわたってエイボンレディと呼ばれる営業スタッフが1対1のコミュニケーションを通じて顧客との関係性を築き、販売網を広げてきた。現在、最も成功しているライブショッピングの要素についてシガラ氏は「私たちは元祖インフルエンサーです」と笑顔を返しながら「製品は一番重要だが、ホストの信憑性、ユーモア、視聴者をエンゲージする力は非常に大切だ。さまざまなホストの実績を比較すると、視聴者がホストと近い気持ちになり、ホストの中に自分たちを投影できることの重要性が見えてくる」と述べた。また、エイボンではホストは自宅のリビングルームで収録することも多いが、その横に子供が映っている等のアマチュア故の不完全さも、かえって信憑性を高め、視聴者はそのようなパーソナルな関係性を求めていることに言及した。

 2022年の予測について、QVCでは「(顧客との)コネクションと信憑性のレベルアップ」を指摘し「Eコマースのトランスフォメーションは私たちにとっても素晴らしい機会だ」とコメント。一方、エイボンは「コミュニティという感覚を作ること」で、ライブ配信中に「うちの辺りは雪が12インチ積もっているわ」などの会話はコミュニティの感覚を生み出すと述べた。

 討論の最後に、ウェインスウィグ氏は、ライブショッピングはホストと顧客との関係性の強さ故に返品率が下がるため、サステナビリティの観点からもライブショッピングの重要性を指摘した。