イーデザイン損保株式会社は、東京海上グループの「通販型自動車保険(ネット損保)」を取り扱う。『NEWよい保険・悪い保険』(徳間書店刊)の「専門家が選んだ自動車保険ランキング」では、8年連続の第1位を獲得。競合がひしめく中、同社は対応満足度とユーザーエクスペリエンス(UX)を磨くことで差別化を図ってきた。8年連続1位はその成果の表れの一つだ。その同社は2021年4月、マーケットでの立ち位置をリ・デザインし、自社の価値の磨き上げを行った。「5つのX」をベースとしたこの変革について、イーデザイン損害保険CMOの友澤大輔氏が解説する。

※本コンテンツは、2021年12月6日に開催されたJBpress主催「第3回 Marketing & Sales Innovation Forum」の特別講演Ⅴ「イーデザイン損保が推進する『5つのX』~高い不確実性のある時代を生き抜くマーケティング変革~」の内容を採録したものです。

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通販型自動車保険の枠組みを超えたインシュアテック企業へ

 2021年4月から東京海上ホールディングスでシニアデジタルエキスパート 兼 イーデザイン損害保険株式会社CMOを務める友澤大輔氏。リ・デザインの背景にはどんな事情があったのか。

「保険業界も例外なくテクノロジーの大きな波にのまれているわけですが、中でも業界の潮流としてインシュアテック(保険=Insuranceとテクノロジーの造語。データ解析やAIを用いた新しい保険のビジネスモデルを指す)が台頭し、『事故に備える保険』から『事故を未然に防ぐ保険』へのビジネス転換が起こっています。他方、われわれの競争市場はこれまで同種のテレビCM、同種の割引・価格訴求、同種の補償・サービス訴求を各社が行うような超同質化市場に成り立っており、ユーザーにとって違いが分かりにくい側面がありました」

 そこで同社は2021年11月18日の共創型自動車保険「&e(アンディー)」を含む、4つ新たな取り組みをリリースした。

 発表された4つのリリースの根本にあるのは、単なる自動車保険サービスではなく、新商品を「事故をなくす活動体」もしくは「自分のカーライフをより楽しくしてくれるサービス」と捉えている点だ。友澤氏は「これにより、保険スペックや価格軸とは異なる“共感軸”でサービスに興味を持ってもらうことを目指す」と話す。キーワードとして「共感軸」が挙がったのは、ユーザーの批判が背景にある。

「保険サービスに対する『事故のときにしか役に立たない』といったご批判を真摯(しんし)に受け止め、ブランドの存在意義(パーパス)で共感を導き、それをサービスで体現しました」

 具体的には、安全運転支援サービスを提供する新商品「&e」では、UXを根本から見直した。それら取り組みは、結果的に会社全体・グループ全体の位置付けを変えることにもつながり、同社は単なる通販型自動車保険の枠組みを超えたインシュアテック企業に生まれ変わった。「契約に関わるストレスが多い」とも言われがちな保険サービスを改善するため、積極的にテクノロジー活用も進めた。AIを活用した事故対応サービスの他、事故に遭わないための安全運転支援サービス、万が一事故に遭った場合のお客様サポートにIoTを活用している。

 さらに新たな発想で始めた新サービスが、移動でマイルが付与されるスマホアプリ「ノルク」である。健康でエコな移動手段であるほど多くのマイルが加算され、たまったマイルは体験・商品・サービスなどの特典に換えることができるサービスで、カーユーザーだけを対象としていないことに大きな特徴がある。

「これは当社の新たなミッション『事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを、お客さまと共創する。』を体現する新サービスだと位置付けています」