製造業のDXの取り組み事例として、まずブリヂストンを取り上げる。

 ブリヂストンは、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げ、独自のDXを進めている。特に近年はソリューション事業に注力し、サービス化への対応を推進。一昨年・昨年と、連続でDX銘柄(経済産業省と東京証券取引所が選定)に選ばれており、DXへの取り組みの評価は高い。

 その同社が目指す姿が「リアル×デジタルでDXを推進し、タイヤと"つながる"ことによる価値を創造」すること。自動車産業のCASE化を支える姿勢がうかがえるわけだが、その取り組み方は自社開発だけでなく、世界的なM&A戦略や連携を通じたデジタル化・サービス化となっている。

 体制もGlobal CEO直轄組織として、DX・ソリューション戦略を担うBridgestone T&DPaaS組織を設置、グローバルにDXを展開と、ブリヂストンのDX関連の取り組みは製造業の未来像を見据えたものになっている。

【ビジネスモデル】プラットフォーム化で新たな価値提供

 TPMS(Tire Pressure Monitoring System)とは、IoTを活用して走行中のタイヤの空気圧低下などを知らせてくれるシステムのこと。運転中に車内からタイヤの状況が分かるため、安全性の向上につながるというシステムだ。

 これは主要なタイヤメーカーが提供しているが、ブリヂストンは以前から鉱山機械を対象にタイヤの遠隔モニタリングを行うサービスを提供。この遠隔サービスを自動車に広げるために、2019年、オランダの地図データ大手企業から法人向けデジタルフリートソリューション(車両管理)事業を1000億円で買収している。

 ブリヂストンではTPMS技術と遠隔サービスを組み合わせることで、トラック・バス事業者向けにタイヤの内圧を遠隔モニタリングするデジタルツール『Tirematics』を利用したソリューションサービスを2020年に提供開始。タイヤの状態の遠隔モニタリングは将来、自動車の完全自動運転が実用化された際には必須となるであろうもので、未来をにらんだ展開といえる。

 もう一つ、Tirematicsの強みは、タイヤ情報を管理するツール『Toolbox』と連動して運用することで、タイヤデータを一元管理できる点。タイヤライフサイクル全体におけるタイヤ情報の管理・分析が可能となる。

 ブリヂストンは現在、TirematicsやToolboxを含む独自のプラットフォーム『Bridgestone T&DPaaS』の展開を進めているが、プラットフォーム化することで、タイヤ以外の外部のデータ(モビリティデータ等)とも組み合わせ、これまでにない新たな価値を顧客に提供することが可能となる。