多様性を受け入れ、持続可能な成長を目指す企業は多いが、社会の要請に応える受け身の姿勢では社員の行動を変えるほどの変革は難しい。その中で東京海上ホールディングスは、経営戦略としてのダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)実現の意思を鮮明に示している。初代グループダイバーシティ&インクルージョン総括(以下、CDIO)に就任した鍋嶋美佳氏に、ダイバーシティカウンシルやグループ全体のD&Iへの取り組みを聞いた。

CEO直轄のD&I推進組織が始動

 同社は2021年4月に、ダイバーシティカウンシル(以下、カウンシル)を創設した。この組織の委員長はグループのCEOが務める。D&Iは企業の成長に必要不可欠な経営戦略だという考えから、CEOがコミットする直轄の諮問機関として推進する姿勢を明確に示した。カウンシルには、ステークホルダーの視点を代表して社外取締役も参加する他、ボトムアップの推進も加速させるため、性別、国籍、年齢、立場などが異なる社員が複数人参加し、さまざまな視点からD&Iへの議論を深めていく。

ダイバーシティカウンシルの様子

 CDIOの役割は大きく2つある。経営戦略としてのD&Iを円滑に推進し、グループ全体をリードすること。全社員のエンゲージメント向上やお互いを尊重して支え合う環境構築を促しながら、企業文化を醸成していくことだ。日本ではなじみが薄いCDIOという役職を、同社が設けた理由は何か。鍋嶋氏はこう語る。

「D&Iは人の問題だけでなく、組織の在り方や文化の観点で取り組む必要があります。これは、人事部が単独で推進するのではなく、会社全体として取り組むものであり、グループ各企業が独立してリーダーシップを発揮していくのが理想的です。当社はグループ各社が国内外に広がっており、業態や組織、労働環境や法制度も違います。そのために、グループ全体として目指す姿や方向性を示すのがCDIOの役割です」(鍋嶋氏)

 カウンシルとCDIOの新設は、グループが一丸となってD&Iに真摯に取り組む意気込みの表れだといえる。そして、グループ会社を含めた取り組みもさまざまな形で変化を遂げている。