マッキンゼー・デジタルは、デジタル専門家であるデザイナー、開発者、データサイエンティスト、デジタルコンサルタントなど5000人からなる組織である。主に既存ビジネス変革と新規事業構築の両方から、年間1200社のDXを支援している。同社パートナーの黒川通彦氏は「新しい資本主義時代を生き抜く、サステナブルな価値創造企業への再生」の方法論として、日本企業で欠如しがちな3つの視点を指摘するとともに、変革ストーリーの重要性を唱える。

※本コンテンツは、2021年11月24日に開催されたJBpress主催「第11回 DXフォーラム」の基調講演「生き残るためのDX-新しい資本主義時代を生き抜く、サステナブルな価値創造企業への再生-」の内容を採録したものです。

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DXとは自社独自の価値創造による生き残り戦略

 マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン、そしてマッキンゼー・デジタルのパートナーである黒川通彦氏は、コロナ禍や地球温暖化を契機に、2050年までに脱炭素社会を実現する世界的世論が形成され、これから株主資本主義はステークホルダー資本主義に変わっていくとして次のように提言する。

「脱炭素社会を背景に世界がステークホルダー資本主義に移行する中、企業はDXの目的を『自社独自の価値創造による生き残り』と定めながら、グリーン×デジタルによる企業変革に向けて動き出さなければなりません」

 その達成のため、まず変わるべきは経営者であると主張する。黒川氏は、グリーン×デジタルの時代下では、旧来のトップダウン組織はもはや過去のものであり、ステークホルダーへの貢献の担い手である若手や現場社員こそが、最も大事な存在になる。さらに管理職や幹部は若手や現場社員と経営者の懸け橋となる。そのため、経営者の役割は「指示・命令」ではなく、「10〜30年後のビジョンを示すこと」になっていく、とする。

「10〜30年後、脱炭素社会で自分たちがどうなっていたいのか。そんなに先のことをいきなり予測するのは非常に困難です。まずは経営者が長期戦略『未来ビジョン』をつくり、そこからバックキャストしながらグリーン×デジタル変革の中間到達点を管理職や幹部に示すとよいでしょう。そうすることで全体の目線が上がり、企業変革が始動します。ビジョンなき変革はなかなか成長軌道に乗りません」