欧州委員会本部(写真:ロイター/アフロ)

 欧州連合(EU)の欧州委員会は12月9日、インターネットを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の労働環境を改善することを目的とした法案を公開した。

2つに合致すれば従業員認定

 法が成立すれば、配車サービス・料理宅配の米ウーバーテクノロジーズや、米アマゾン・ドット・コムが出資する英デリバルーなどのギグエコノミー企業の負担が増えることになる。

 欧州委によると、域内では約2800万人がギグワーカーとして働いている。大半は働き方に自由度がある個人事業主だが、約550万人は実質的な雇用関係がある。しかし彼らには最低賃金や有給休暇が保証されず、健康保険や労働災害保険のなどの保護が適用されないという。

 欧州委は今回の法案で5つの基準を明示した。

(1)企業が報酬の水準や上限を定めている
(2)仕事の成果を電子的に監視している
(3)仕事の選択や労働時間・休暇の自由、委託業者の利用(再発注)を制限している
(4)服装や行動に制限を設けている
(5)顧客基盤の構築や第三者のために働く発展性を制限している

 このうち、少なくとも2つに当てはまれば企業は雇用主であり、労働者は従業員と認定されるという。

 欧州委で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー上級副委員長は「デジタル労働プラットフォームで創出される雇用機会がますます増える中、まっとうな労働条件を確実することが必要だ」と述べた。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、法案は今後、欧州議会とEU加盟各国で議論・審議され、法が成立するまでには何年もかかる。だがこの法案は、ギグエコノミーの労働者権利を巡る世界的な議論に影響を与える可能性があると、同紙は報じている。

 これを受け、ウーバーやデリバルー、エストニアの配車・料理宅配ボルト・テクノロジーは反対している。ウーバーは「数千もの職が奪われるリスクがあり、逆効果だ」と批判している。