民間企業や民間銀行、有識者などから構成される「デジタル通貨フォーラム」は11月、「進捗報告書」を公表した。フォーラムの座長を務める山岡浩巳氏がその内容と背景を解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第64回。

 経済のデジタル化に伴い、デジタルマネーに大きな関心が集まっています。

 2009年に初めての暗号資産「ビットコイン」が登場し、並行して、中国の“BAT”や米国の“GAFA”に代表される「ビッグテック」と呼ばれる巨大テック企業が、一斉にデジタル決済の分野に参入しています(第9回参照)。さらに2019年には、GAFAの一画であるフェイスブック(現メタ)が主導するデジタル通貨リブラ(現ディエム)の計画が公表されました(第15回参照)。

 こうした中、中央銀行自身が発行するデジタル通貨(中央銀行デジタル通貨)への関心も高まっています。バハマは昨年(2020年)10月、中央銀行デジタル通貨である「サンドダラー」の発行を開始しました(第21回参照)。また中国は現在、「デジタル人民元」の試験発行を国内で行っており、来年2月の北京冬季オリンピックの会場でも試験的流通が予定されています(第48回参照)。

なぜ今デジタルマネー?

 では、デジタルマネーに関心が集まっている背景は何なのでしょうか。

 まず、デジタル化に伴い、現金の取り扱いや保管、運搬などのコストが意識されやすくなっていることが挙げられます。また、スマートフォンの普及やブロックチェーン技術の登場などにより、技術的にも、現金に代わり得るデジタルマネーが実現可能に近づいていることも指摘できます。

 さらに、デジタル化によって取引に伴う「誰が、いつ、どこで、何を買ったか」といったデータを活用できる余地が広がる中、基本的に「価値」の情報しか運ばない現金に代わり、デジタルマネーを使ってデータの利活用を進めたいとのニーズも強まっています。

 加えて、デジタル時代にふさわしいビジネス環境やエコシステムを構築していく上で、支払決済手段をデジタル化し、これに新たな機能を持たせることへのニーズも強まっています。例えば、デジタルマネーにさまざまなプログラムを組み込めるようにする、すなわち「プログラマブル」にすることで、商品や部品の納入に伴い自動的に支払いが行われるようにすることなどが考えられます。