イーデザイン損害保険株式会社 取締役社長 桑原 茂雄 1989年 東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)入社。米国法人でCIO(IT部門責任者)を経て2015年よりビジネスプロセス改革部長として、同社の業務改革を主導。 2018年よりイーデザイン損害保険株式会社の取締役社長に就任。

 11月18日、東京海上グループのダイレクト損害保険会社 イーデザイン損害保険が「インシュアテック保険会社」に生まれ変わる。インシュアテック保険会社には、どのような特徴があり、イーデザイン損保はなぜ、そう生まれ変わろうとしたのか。そして、何を実現させようとしているのか。桑原茂雄取締役社長に聞いた。(聞き手:『JDIR』 編集長 鈴木顕宏)

保険会社の定義を変える

――損害保険業界の現状と、その中での御社の状況をどう捉えていますか。

桑原 損害保険会社は、代理店が販売する形と、ネットで直接加入するネット系に分かれていますが、代理店で保険に加入する機会が減ってきています。代理店がどこにあるのか分からないであったり、まずはネットで調べたであったり。そのため、代理店扱いからネット系へのシフトが起こるはずなのですが、これまでは、お客さまの中に保険は難しい、複雑だ、事故の時に相談したいがネット系だと不安という思いもあって、実際にはなかなかシフトが起きませんでした。

 そうした中、コロナ禍もあって人と会わない保険契約も出てきて、徐々にネットへのシフトが起きてきています。これからデジタルネイティブといった層が世の中の主流になるにつれ、この流れがより加速してくる可能性もあると思っています。

 ネット系損保ではソニー損保がナンバーワンの存在で、それ以外の保険会社は団子状態ですので、弊社がどうしたら対抗馬になれるかが重要なポイントになっています。

――「インシュアテック保険会社」としてどのようなことに取り組んでいくのでしょう。

桑原 インシュアテックとは保険(Insurance)とテクノロジーを掛け合わせた造語です。そのため、インシュアテック保険会社ではテクノロジーを重視しています。と言っても、ミッションやパーパス、お客さまへの体験価値など、ストーリーを重視するのがインシュアテックのもう一つの本質だと思っており、こちらのほうが本当は優先順位が高いのです。

 つまり、パーパスドリブンとミッションドリブン、テクノロジーとを融合させ、データドリブンも合わせて、この3つがうまく重なり合ったものがインシュアテック保険会社です。

 われわれの存在価値とは何か。保険会社というものは事故があった後の存在ですが、そうではなくて、われわれは事故が起きる前からしっかりと関わり、そもそも事故が起きないようにしていこうということをミッションとして掲げています。保険会社の定義を変え、事故のない世界を作っていこうと考えています。

 これに取り組むことで他のネット損保との差別化、差異化を図りつつ、お客さまにとって価値のあることを行い、テクノロジーをうまく使ってそれを際立たせる。さらにオペレーションを筋肉質にし、それをデータで把握してPDCAをしっかり回して改善していきます。

 私が2018年にイーデザイン損保に来ましたが、その時からカスタマーエクスペリエンス、お客さまの体験価値を上げようと言っていて、それを実現するためには人が頑張ればいいと思いますし、人が頑張るには、テクノロジーで代替できることはやったほうがいい。究極の目的はお客さま体験を上げるということです。

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