「垂直農法」(Vertical Farming)で野菜づくりを行うノルディック・ハーベスト(デンマーク)の最先端「農場」。台湾のYesHealth Groupが技術開発した農場の大部分は自動化されている(ノルディック・ハーベストのウェブサイトより)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン 代表取締役、法政大学 大学院 客員教授)

 COP26(国連気候変動枠組条約 第26回 締約国会議)が10月23日から11月12日まで英スコットランド・グラスゴーで開催されている。

 COP26は、地球温暖化による自然災害の増加や海面上昇、森林破壊などによって人間のみならず地球上の全ての生物の生存が危ぶまれている現状に対して、国際社会が協調して対応することを話し合うための会議体だ。

 地球温暖化を食い止めるためには「温室効果ガス」と言われる二酸化炭素やメタンガスなどの排出量をどれだけ削減できるかが大きな鍵になる。しかし、これまで具体的に実行に移された有効な対策については、京都議定書が結ばれた1997年の京都での締結国会議(COP3)から目立った進捗がないのが現状である。

 一方、地球温暖化がこれ以上深刻化することによってサステナビリティが脅かされる産業の代表が「農業」であることは衆目の一致するところだろう。世界規模での農業の衰退は、水不足や新たな感染症の蔓延、開発途上国で増え続ける人口と相まって「食糧危機」のリスクを確実に増大させる。

 そしてこのような危機的な状況の中、注目されている先進テックのひとつが「フードテック」だ。より具体的には「屋上農園」や「垂直農法」(Vertical Farming)といった都市型農業のイノベーションである。ちなみにフードテックは来年(2022年)年初に米ラスベガスで開催されるCES 2022でも、温室効果ガス削減と食糧不足の解消という2つの側面から重要視され、展示やカンファレンスの公式なカテゴリーとして追加されることが決定している。

(参考)「2年ぶりのリアル開催、CES 2022の見どころを一挙紹介!」(『JDIR』2021.10.11)

 そこで今回は、都市型農業の代表格である「屋上農園」と「垂直農法」の特徴や違い、具体的な取り組み事例、さらにはサステナビリティを前提にした新たなインダストリーとしての新たな可能性について見ていきたい。