HR×AIというと、既に転職市場にマッチングサービスが登場している。しかし、HRのもう少し広い領域を舞台に情報の定量化を行おうという取り組みが進んでいる。人材活用を支援するサービス「アッテル」を開発・提供する、株式会社アッテルの塚本鋭氏に聞く。

知りたいのは「自社で活躍してくれるかどうか」

 従来、担当者の経験や勘によるところが大きい人事の領域も、DXやデータドリブンといったキーワードで語られるようになってきた。転職市場にはマッチングサービスが導入されているし、人事部門の業務の効率化を行うサービスも幾つか出ている。いわゆる「HRテクノロジー」の分野だ。その中でも人事部門のDXは今、大きく進化しようとしている。

 その要因の1つに、「ピープルアナリティクス」と呼ばれる人材マネジメントの手法がAIの活用により、誰もが使えるレベルにまできているということが挙げられる。ピープルアナリティクスとは、組織内のメンバーの情報を定量化することで、組織の強み/弱みを数値化し、戦略的に人事施策を打っていくというもの。もちろん、それだけではなく、採用計画、人材育成、将来的な事業戦略にも生かすことができる。

 「アッテル」はまさにピープルアナリティクスをもって人事領域の課題を解決しようとするベンチャー企業だ。コンセプトは、これまでの勘と経験だけの人事から、データを正しく使うことで人事部門、経営者の意思決定の精度を高めていくこと、だ。

塚本 アッテルが提供するのは人材情報を定量化すること。どういう人材なのかを数値化する。そして、それを分析するサービス、さらに予測という部分で機械学習を使ったり、シミュレーションの機能を提供します。それが打ち手につながって、実際、どれだけ改善されたのかとPDCAを図る。これらの機能をクラウド上でワンストップで提供しています。

 具体的には、アッテルのサービスを使うとなった場合、社員が定量化に向けた適性検査を受けるという形になる。もちろん、一部門からスタートする場合もある。また、既に定量化されているデータがあれば分析から入ることもある。ただ、適性検査から、その後の分析、それをどう活用するかという部分まで、一連の流れを通して提供するところが他社との違いになる。

 起業の背景にあったのは、塚本氏自身がマネジメントの現場で感じていた違和感だ。前職のクラウドワークス時代、5年間でおおよそ100人に及ぶスタッフのマネジメントを手掛けた。しかし、自身が面接を担当し採用した人が活躍しなかったり、すぐに辞めてしまうということが起きてしまう。そこで適性検査のデータを見ていくと、これはちょっとおかしいなと感じた。というのは、現場が知りたいのは「この人がどういう人か」ではなく、あくまで「この人が自社で活躍(定着)してくれるのか」ということ。それが、これまでの適性検査では分からない。

塚本 適性検査が使われるようになって50年くらいになりますが、この問題は以前からあったはずなんです。1つ大きな課題は、人事において適性検査のスコアと入社後に活躍・定着したのかをひも付けてみるべきという考え方が、そもそもあまりなかったことだと思います。

 取り組み始めたのは5年くらい前からだったというが、根底には、単純に自分のチームで活躍してくれるのはどんな人かを知りたかったというのと、不幸なミスマッチをなくしたいという思いがあった。採用担当の意思決定のミスは自社だけでなく、応募者にとっても不幸な結果になる。実際、塚本氏自身、何としても採用したいと採用した人が、後から考えると、スタートアップよりも大企業で活躍するタイプだったことがあり、その人の数年のキャリアを無駄にしてしまったなという後悔があった。そうしてミスマッチを減らしたい、採用に関する意思決定の精度を高めたいと調べていくと、自分だけ精度を上げても解決できないということが分かってくる。

 実際、塚本氏の調査では、ほとんどの適性検査が入社後の活躍や定着に関係なかったという事実がデータとして見えてきたという。

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