(写真左)
カルビー株式会社 常務執行役員 CHRO 兼 人事総務本部 本部長 武田 雅子氏
(写真右)
NTTコミュニケーションズ株式会社 執行役員 ヒューマンリソース部長
山本 恭子氏

 カルビーとNTTコミュニケーションズ――。早くから働き方改革に取り組み、ワークスタイル変革の巧者とされる両社には、女性CHRO(最高人事責任者)の存在があった。彼女たちはどのような思いを持って働く環境作りに取り組んでいるのか。コロナ禍にあってさらに進化を遂げる組織作り、人財育成などについて語っていただいた。

コロナ禍に順応、ESも過去最高に

――カルビー、NTTコミュニケーションズの両社は早くから先進的な働き方を取り入れてきましたが、コロナ禍でさらに加速した点や変化した点はありましたか。

武田雅子氏(以下、武田) カルビーには、全員が揃ってオフィスで働いている状態というのがかなり前からありません。2014年から在宅勤務制度(現在は「モバイルワーク制度」)を導入し、早くから柔軟な働き方を支える仕組みを整えてきたためです。ただ、以前は育児や介護などを理由に一部の社員が在宅勤務を利用することが多かったのですが、コロナ禍で全員がリモートワークをせざるを得なくなりました。それが2020年の春です。

 最初は皆さんも試行錯誤されて、どのように仕事をすればいいのか、問い合わせが来ることも度々ありました。ところが5月の連休明けぐらいになると、「こんなふうに工夫するといい」といったリモートワークについてのティップス(ヒント、アドバイス)がオンラインのワークショップを通じて集まるようになり、社員の皆さんの順応性の高さには驚きました。

 働き方に関して当社では定期的にアンケートをとっており、当時は少しでも困っていたり、不満を持つ社員がいたら、マンツーマンで人事が個別に話を聞いていました。それを継続して繰り返した結果、2020年秋には不満や不安を持つ社員はほとんどいなくなりました。

 興味深かったのは、2021年3月のアンケート結果です。アンケートの最後には毎回、「最近、新しく始めたことはありますか」という設問があるのですが、「こういう時にはオフィスに集まることにしました」という、オフィスの使い分けに関するティップスをたくさんいただいたのです。直近のアンケートでは、「PCのスペックを上げてほしい」とか「自分は良かれと思ってコミュニケーションをとっているが、本当に良かれになっているのか悩む」といった、ハイレベルな要望や悩みが寄せられるようになり、皆さんどんどん進化していっていることが分かりました。

カルビー株式会社 常務執行役員 CHRO 兼 人事総務本部 本部長 武田 雅子氏

山本恭子氏(以下、山本) 私たちも2020年2月下旬にパートナー社員の方も含めて、原則リモートワークに舵を切りました。リモートワーク中心のワークスタイルが加速する中で、3つの“気づき”がありました。1つ目は、「リモートワークネイティブ」をキーワードに様々な取り組みを進めていった結果、コミュニケーションの取り方やチームビルディングのやり方、効率的な情報共有の仕方など、リモートワークに関するノウハウが幅広くたまっていったことです。これらを「リモートワークハンドブック」としてまとめて、社内外に広く公開しています。

 2つ目は、私も驚いたのですが、ES調査の結果が過去最高だったことです。今まではどんな施策を打っても、数ポイント上がるかどうかという状況でしたが、2020年12月の調査では、前年度に比較して、4~7ポイントも上がりました。社員の会社へ対する信用、社員同士の連帯感、社員が会社に尊重されていると感じるかなど、すべての項目で過去最高となりました。働き方の場所と時間の柔軟性が格段に高まったことについて、社員がポジティブに受け取っているというのは大きな気づきでした。

 これに関連して3つ目は、これまで社員が抱えていたいろいろな制約を緩和することにつながり、それぞれが活躍できる場が増えたことです。例えば、育児のため短時間の勤務形態でしか働けなかった社員もフルタイムに復帰できました。通勤がないため、フルタイムで働いても、お子さんのお迎えに行けるからです。また、今までは転居を伴う異動がなければチャレンジできなかったプロジェクトに対しても、転居をせずに参画することができるようになり、広い意味で社員の皆さんの活躍を後押しすることにつながりました。