※本コンテンツは、2021年8月26日に開催されたJBpress主催「第2回 公共DXフォーラム」の特別講演Ⅴ「DX実現に向けた埼玉県の取組」の内容を採録したものです。

 令和3年3月に「埼玉県DX推進計画」を策定し、10年先の社会を見据えてDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現へ向かう埼玉県。県政が目指すべきDXとはどのようなものか。令和元年の知事就任以来、ペーパーレスをはじめデジタル化を徹底して進めてきた大野元裕知事に、意識すべきDXのフェーズ、DX実現のために必要な要素、それらを踏まえた埼玉県の具体的な取り組みについて聞いた。

複雑化する社会課題の解決にはデジタルが不可欠

 埼玉県は全域が都心から100キロメートル圏内にあり、利便性と豊かな自然を兼ね備えている。人口は730万人と全国5位、平均年齢は45.4歳である。ただ、若い世代の人口が増え続けている県ではあるものの、将来の人口減少と高齢化、そして近年の自然災害の多発、新型コロナウイルス感染症の拡大など、大きな環境変化に対応する必要に迫られていることは、他県と変わりない。

 そのような社会課題の解決の鍵が、デジタル技術の活用にあることは論をまたないが、「あくまでデジタル技術は手段である」と大野氏は強調する。

「例えば、働き手不足の解消にはAI、自動運転、ドローンといったデジタル技術の活用は不可欠であり、本県でも実証実験を進めています。ただ、これらの技術の本格展開はまだ先ですし、社会課題を即解決するものでもありません。こうした技術やサービスを使いこなすためのインフラや制度の整備が必要であり、そのためにまず、社会そのものを変革しなければならない。これがDXの本質であると捉え、大きな課題として取り組んでいます」

 大野知事が就任する前から、埼玉県はデジタル化に積極的に取り組んできた。

 平成13年に国が「e-Japan戦略」(日本型IT社会の実現に向けた構想)を打ち出した頃から「IT推進アクションプラン」を策定し、電子申請システムや電子入札システムなどのサービスを導入。スマートフォンの普及に合わせて、県公式Twitter、Facebookなどソーシャルメディアでの情報発信もいち早く取り入れてきた。

「平成28年からは県公式スマホアプリ『ポケットブックまいたま』でプッシュ型の情報提供を始め、現在66万ダウンロードを達成しています。また、上の図の下段にあるように、文書管理、財務・会計、旅費など、システム化によって内部事務の業務効率化を図ってきました。近年ではRPA、AIを活用したOCR(光学文字認識)の導入による人的作業の機械化を進めています」