2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの影響が、2021年度になっても続いている。

 ワークスタイルもコロナ前とではだいぶ変わった。オフィス用品通販のアスクルの調査によると、テレワーク制度について「恒久的な制度になる予定」と答えた企業の割合が、2020年5月では10.9%であったものが、2021年4月では24.0%になっている。

 それだけテレワーク=リモートワークが常態化してきているわけだが、営業分野でも緊急避難的に行われたオンライン営業が、テレワーク同様に常態化してきている。本稿では、私のコンサルティング経験を踏まえて、常態化しつつあるオンライン営業について、対面営業との変化について定量面と定性面からお伝えする。

不成約商談ではクロージングワードが大幅減

 まずは、定量面から見ていくことにしよう。

 ここではコグニティ株式会社の調査結果を紹介したい。コグニティ社は、文脈解析技術(知識表現フレームワーク)を有していて、その技術を商談トーク解析に応用している(分かりやすく言えば、商談トークをAIで解析するサービスを行っている)会社である。その会社が対面営業とオンライン営業の商談トークを解析した結果、以下のことが分かった。

① 商談時間と話量
・1回の商談時間は、対面営業53分→オンライン営業47分に減少
・話量(文字量)は1万6000語→1万7500語に増加

 皆さんも経験があると思うが、オンライン営業の場合、対面営業と比べると、事務的になる傾向があり、雑談が減る。そして、画面を見続ける(見ていなくとも聞くことに集中する)ためか、疲労度が増す。その結果として、どうしても商談時間は短くなる。

 一方、(画面共有をしている場合は特に)相手の反応が読みづらいので、話す量が多くなる。私も経験があるが、相手の反応が見えないと焦りでついついしゃべり過ぎてしまうのである。

② 質問量
・買い手から質問量は、1つの商談においての対面営業21.7回→オンライン営業17.7回に減少
・売り手からの質問量は、12.3回→21.0回に増加

 皆さんも、オンライン会議に参加していると、ミュートを解除してまで発言することに抵抗を感じることはないだろうか。それと同様で、商談場面においても、対面営業と比べるとどうしても買い手は質問に対して消極的になる。

 一方、売り手はどうかというと、前述の通り、オンライン営業では相手の反応が読みづらい。場合によっては、買い手がカメラをオフにしている場合もある。そうした場合に売り手が反応を確かめる確実な方法が質問(投げ掛け)である。そのため、相手の反応を確かめるために、対面営業と比べると、質問の量は増えるのである。

③ 商談におけるクロージングワードの出現数
・不成約商談では対面営業11.3回→オンライン営業7.0回に減少
・成約した商談では12.7回→14.3回とわずかに増加

 受注している商談では、対面営業とオンライン営業ではそれほど変わらないが、不成約商談では、クロージングワードが大幅に減っている。

 それはなぜか。受注確度が高い(=声で買い手の購買サインが分かる)場合は、積極的にクロージングがかけられるが、そうでない場合はテストクロージングさえかけにくく、クロージングワードは発出できないのである。営業パーソンは対面営業で、思っている以上に表情や態度から購買サインを、読んでいたことがうかがえる。