※本コンテンツは、2021年6月23日に開催されたJBpress主催「第9回 DXフォーラム」の特別講演Ⅱ「中国におけるデジタル革命の現状と日本企業への示唆」の内容を採録したものです。

2015年から始まった中国の “創新”

 2020年の新型コロナウイルス感染症との戦いにおいて、中国ではデジタル技術が大いに役に立ちました。しかし、ここで強調しておきたいのは「ローマは一日にして成らず」ということ。コロナ禍でデジタル技術が突如生まれて爆発的に拡大したわけではなく、それよりも以前から開発・社会実装が進んでいました。

 まず中国の近代史をひもとき、中国が革新を進めた要因を振り返りたいと思います。1978年「改革開放」を実施して以降、中国は5つの段階を踏みました。

 改革開放でスタートした「①開放する中国」では、実利的な経済政策が進展。真っ先に打ち出した政策の一つが外資企業、特に製造業の誘致でした。中国国内に外資の工場を設け、中国人労働者を雇い入れてもらい、政府に税金を納めてもらう。そうした仕組みで中国製造業は発展し「②製造する中国」へと転換します。

 しかし、中国の経済発展が都市部に集中した影響から、都市と農村の格差が拡大し、「③二元化する中国」へと変わっていきます。同時に中国は、日本ほどではないものの、少子高齢化が進んでいるため「④老いる中国」としての側面も如実に現れていきました。

 そうした中、中国は「⑤創新する中国」に移り変わっています。2015年秋、中国政府は5つの発展方針を打ち出しましたが、その第一に掲げられているのも「イノベーション」を意味する「創新」でした。