中身のないメッセージは見抜かれる

 前回前々回のコラムではメッセージングの重要性について語ってきた。その根本は、人間として人間に向き合うということだ。「きちんと話せば、相手はきっと理解してくれる」と信じて向き合うという姿勢である。

 ところが、一部の上位マネジメントの中には、本人にはそのつもりがないにしても、結果的に現場をバカにしたり、子供扱いしているケースがある。「こんなことを現場に説明しても、どうせ関心・興味ないだろう、どうせ理解できないだろう」などと、現場の意識・能力を見下しているのである。背景説明なんかしなくても「これをやれ!」と命令すれば言うことを聞くだろうという傲慢さが、こうしたところから透けて見えてしまう。

 「説明なんかしなくても、何か文句があったら言ってくる人は言ってくるだろう。だから放置しておけばいい。まあ、たとえ、文句を言ってきても、『経営陣で決めたんだから・・・』と突っぱねればいいだろう」というような横柄な姿勢は、なぜか伝わるもの。むしろ、そのぐらいのことを察する能力が人間には備わっているのだと考えた方が自然である。

 また、皆が集まる場で「時間がないので、説明を割愛しますが・・・」というような<言い訳>や、「社内向けの説明資料づくりは重要だと思いませんので・・・」というような<言いぐさ>は、「私はこれについて、あなたへの説明に時間を費やすほどの重要性を感じていません」というメッセージとして、聞き手に伝わる。そのような現場をバカにした態度は当然ながらよくない。

 秘密裏に進めていることを除いては、戦略(技術戦略や商品戦略)をきちんと伝えることが重要である。戦略の中身を語ることなく、危機感をあおるだけ、「やらなければいけない」「やるしかないだろ」と迫るだけ、「○○年度までに○○円の売り上げになるようなものをつくれ」と目標を掲げるだけでは、かえって逆効果である。

 今、上位マネジメントにいる人も、自分が若かった頃を思い起こしてほしい。こうした意味・意義が腑に落ちないメッセージは虚しかったのではないだろうか。