写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 依然続くコロナ禍、1年を過ぎても収束の兆しが一向に見えない状況にある。

 この間、社会の価値観は変容した。特にテレワークをはじめとしたオンラインによる働き方が広がったことは読者の皆さんもご存じの通りだ。

 しかし、(物理的に出勤をせざるを得ない職種を除いて)まだこうしたオンラインベースのコミュニケーションに慣れず、結局はテレワークを諦めてしまっている組織や人も少なからず存在しているだろう。

 この差は一体何が原因なのだろうか。今回はマネジメントソリューションズ PMO ONLINE事業部長の小宮啓太郎氏がPM(プロジェクトマネジメント)という観点を含め、考察した。

株式会社マネジメントソリューションズ PMO ONLINE事業部長の小宮啓太郎氏

これまでは「あうんの呼吸」に頼り過ぎていた

 日本生産性本部が2021年1月に公表した第4回「働く人の意識調査」によれば、テレワークによる労務上の課題は「仕事の成果が適切に評価されるか不安」「仕事振りが適切に評価されるか不安」が上位であった。テレワークだと、評価自体が適切にされないのではないかという点に不安を抱いている人が多かったわけだ。

 こうした背景には、業務内容や成果定義自体の問題というよりも、マネジメントやコミュニケーションの問題が見え隠れする。テレワークをしていると、「上司の顔色がうかがえない」「何気ない会話や意思疎通ができない」などといったことは読者の方々も一度は経験しているのではないだろうか。

 テクノロジーも急速に発達し、今やビデオ会議システムやテキストチャット、クラウドストレージなどがあれば、かなりのことができるようになってきた。しかし、これらはまだ、全ての企業に当たり前のように導入されているとは言えず、さらにそのテクノロジー自体もまだ完全にはオフラインでの業務を代替するまでには至っていない。

 それよりも問題なのは、これまで多くの組織(とりわけ日本企業)の仕事の進め方やマネジメントが、いわば「あうんの呼吸」とでもいうような、対面によるコミュニケーションに頼り過ぎてきたことにあるのではないかと筆者は考える。

 本来であれば、しっかりと定義され、しかるべき場で意思決定され、明文化されるべきもの、が「空気を読む」「行間を理解する」「顔色をうかがう」「事前に根回しする」ことで代替され、それにより多くの物事が成立していたのではないか。例えば、意思決定者が曖昧であっても各人が場の空気を察しながら進む会議や、個別に膝を突き合わせて本音を引き出す場面、喫煙所での会話による実質の事前合意などがそれにあたる。これらは良くも悪くも多くの場面で物事を前に進めてきた。

 それがテレワークとなり、上述のような対面でのコミュニケーションを前提としてきた人たちには大きな障害となった。これが冒頭の課題の形として現れているわけだ。