スクラムのプラクティス(実施活動)の一つであるスプリントプランニング(計画づくり)の様子。チーム全員で、一週間の活動計画をつくる(写真提供:永和システムマネジメント)

 アジャイル――。本来はソフトウェア開発という限られた分野で使われていたこの言葉を、ソフトウェア開発とは関わりのないビジネスパーソンが聞いたり話したりすることが増えている。市場の変化スピードにビジネスが追いつくのに、アジャイルが適している理由を解説する。(JBpress)

 そもそも「アジャイル」とは何か、については、前編「ビジネス変革の決定打「アジャイル」とは何か」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64834)で解説している。

(※)本稿は2021年4月7日に発行された『アジャイル開発とスクラム 第2版』(平鍋健児、野中郁次郎、及部敬雄著、翔泳社)より一部抜粋・再編集したものです

ビジネスとITで目指す“ゴール”が違う

 アジャイルによる開発手法の採用が進んできた背景には、昨今のビジネスの不確実さ、変化の速さがある。そのビジネスをサポートするために、ITが積極的に変化に対応することが求められているのである。さらに、「人」と「チーム」の力が最も大切な要素である、との認識が進んだこともあろう。

 これまで、ビジネスの主体と、そのビジネスが対象とする市場(あるいはユーザー)、そして情報システム開発の主体(IT)は図2-1のような関係にあった。まずビジネスの主体が「市場分析」し、それを要求仕様書というドキュメントにまとめる。そしてそれを基にITにシステム開発を「発注」する。その後、ITはその要求を満たすべくシステムを開発し「納品」する。そしてビジネス主体が納品されたシステムを市場へと「リリース」する。ビジネスの主体と開発の主体の間には発注と納品という手続きがあり、契約を介することになる。

図2-1 これまでのビジネス、市場、ITの関係

※ 配信先のサイトで図が表示されない場合は、こちらでご覧ください。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64835

 図2-2はスタンディッシュ・グループのレポートに掲載されているデータである。

図2-2 システム機能の利用度(XP2002でのStandish Group報告より)

 リリースされたシステムの機能のうち、まったく使われない機能が45%、ほとんど使われない機能の19%を足すと、何と3分の2が使われない機能だという。この数字を見ると、ほとんどの情報システム開発に携わる人たちは「うんうん確かに」とうなずく。日常的に身の回りで起こっている現象なのだ。

 私たちは、壮大なムダを日々作っている。では、なぜこうなるのか。