企業の社会的責任の重要性

 企業の社会的責任という考え方は、1950年代から日本でも語られ始めた比較的古い概念である。公害や企業による不祥事をきっかけに企業の責任が問われ、企業が社会から受け入れられ、存続し続けるためには果たすべき役割があるといわれてきた。つまり、企業の社会的責任は、企業の継続性(サステナビリティ)の議論そのものである。その関心が高まったり、落ち着いたりという時代を繰り返していたのである。

 2000年ごろから、SRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)ファンドなどのエコファンドが登場し、投資先選定の中で、CSR(Corporate Social Responsibility)のスコアリングや格付けが行われるようになった。それらの動きも受けつつ、経済団体が推進ガイドラインなどを整備してきた中で、CSRという言葉や取り組むべき内容が広く知られ、多くの企業が取り組むようになってきた。

 それには次のような、幾つかの時代背景もある。

・バブル崩壊後の政府による規制緩和
・企業におけるガバナンスや内部統制の強化
・関連する法の改正
・企業の商品化に伴うM&Aや資本提携などの増加
・企業格付け・評価の重要性
・ビジネスのグローバル化およびビジネスモデル革新
・インターネットの普及による海外情報の入手スピードアップや企業情報の重要性

などが挙げられる。

 これらの要因が重なり、投資家、他の事業会社、社会から企業を評価する視点は、単に売上げや収益を上げているかどうかだけでなく、きちんとした会社なのかということが強く問われるようになってきた。「この会社は世の中の流れに対応している会社なのか」「公正さや誠実性を持った会社なのか」など、非財務の視点で見る流れは、コロナの環境下によって、環境変化への対応力やそのスピード感など評価の要素が増えることはあっても減速することはないだろう。

「当社という存在は経済的な価値以外に、どのような社会的な価値があるだろうか」を自問すべき時代になっているのである。(本気のSDGs第1回を読む)