ホンダとの共同開発によるカーナビの元祖「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」(写真提供:アルプスアルパイン)

 新型コロナウイルスは世界中で感染が拡大しており、社会や経済に大きな影響を与えています。グローバル化が進む製造業のサプライチェーンが寸断されたことで、日本経済を支えてきた製造業も、その洗礼を受けています。ポスト・パンデミックの時代、日本の製造業は生き残りをかけてどのように戦うのか。その答えを探るべく、「ポスト・コロナ時代~ものづくりの経営者たち」と題して、日本経済をけん引してきた「ものづくり」の雄のトップをインタビューしていきます。

 今回は、電子部品事業と車載情報事業を中核に世界展開するアルプスアルパインの栗山年弘社長の後編を掲載します。アルプスアルパインは1948年、アルプス電気の前身「片岡電気」としてわずか23人の社員で始まりました。それが今では、資本金387億円、従業員4万人を超えるグローバル企業に成長しています。リーマンショックよりも影響が大きいコロナ禍も、「ニッチトップ戦略」で乗り越えようとしているアルプスアルパイン。再興をかける世界的ものづくりメーカーのトップに話を聞きました。(聞き手は杉浦美香@みんなの試作広場

セクシーでアートな部品を生み出す

──アルプスアルパインはニッチトップ戦略を掲げています。これまでのニッチトップ製品は何が挙げられるでしょうか。

栗山年弘氏(以下、栗山):アルプスアルパインのファースト・ワン、ナンバー・ワン製品でいえば、パソコン用のマウスです。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏と共に開発を進め、日本で初めて製品化しました。アップルの「AppleⅡ」のフロッピーディスク駆動装置(FDD)では、一時ほぼ全量を供給しています。また、高さを従来の半分に抑えた後継機開発の際には、スティーブ・ジョブスが「セクシー」と表現したほどです。

 車載用では、ホンダとの共同によるカーナビゲーションの元祖「ジャイロケータ」のほか、高周波を利用したリモートキーレスのシステム、車両情報を表示するタッチパネルなどを1980年代に開発しました。世界でのファースト・ワン製品も多数生み出しています。

マイクロソフトと共同で開発し、日本で初めて製品化したパソコン用マウス
さまざまなフロッピーディスク駆動装置(FDD)やHDD。AppleⅡの後継機種用のFDDにはアップルのスティーブ・ジョブスがセクシーと表現した