キャッシュレス決済はQR決済ブームや消費者還元事業で伸びているが、「浸透した」と言えるにはもう少し時間が必要

 PayPayに代表されるQRコード決済サービスが広がり始め、キャッシュレス決済が社会への浸透度を高めている。Fintech協会(https://www.fintechjapan.org/)でキャッシュレス分科会の担当理事を務める、カンムの八巻渉社長にキャッシュレス決済の現状と展望を聞いた。

――スマートフォンを使うQRコード決済サービスが次々と登場し、キャッシュレス決済は一段と浸透してきたように見えます。

 キャッシュレス決済比率は2018年で24%程度でした。その後もQRコード決済ブームや消費者還元事業で伸びているとはいえ、現状はまだまだです。比率が50%ほどに達したらキャッシュレス決済は本当に「浸透した」と言えますが、そこへ到達するにはもう少し時間が必要でしょう。

 脚光を浴びてきたQRコード決済サービスでは、「PayPay」が取扱高を急激に伸ばしており、2020年2月に月間1250億円ほどに達したとみられます(図)。これは電子マネーの「nanaco」を超える水準で、「WAON」に迫る勢いです。

図 QRコード決裁と電子マネーの月次取扱高の推定値。十分なデータが得られなかったために含まれていないサービスもある(作成:八巻渉氏、https://note.com/8maki/n/nf93f237e22f2

 一方、PayPay以外は月間の取扱高が500億円程度にとどまっていて、国内のQRコード決裁サービスの合計取扱高は年間2兆5000億円前後とみられます。年間の取扱高が5兆5000億円規模の電子マネーに比べると、半分未満の水準です。

 こうしてみると、QRコード決済サービスは、キャッシュレス決済を爆発的に浸透させるほどのインパクトはこれまでのところなかったと言えそうです。もっとも、QRコード決済は1回あたりの支払額が少ないので取扱高としてはどうしても少なくなります。支払い回数という観点で見れば、金額よりも存在感が増していると言えるかもしれません。