AIによる画像処理やIoT、ロボット、AR/VR技術は、ここ数年で急速な発展を遂げた。これらが与えるインパクトは、オフィスや工場のみならず、屋外での業務が中心となる「建設・インフラ分野」にまで及んでいる。

 測量や施工をはじめとする「現場作業」が多くを占める建設業界で、先端テクノロジーはどのような価値を生み出しているのだろうか。そして、業界が直面する諸問題に対して、どのような解決策をもたらしているのだろうか。

 いま建設業界が直面する課題をおさらいした上で、そうした課題の解決に寄与するデジタルトランスフォーメーションの先端的な事例を紹介していきたい。

生産性向上がなおざりにされてきた業界事情

 近年、日本の産業界は深刻な労働力不足に悩まされているが、建設業界も例外ではない。その背景には、建設現場の生産性向上が常に先送りされてきた歴史が関係している。

 国土交通省が公表した統計を見ると、2004年以降、建設業界では長らく労働力過剰が続いていたことがわかる(図1)。つまり、労働力の供給量に対して、需要に当たる建設投資が一貫して下回り続けてきたのだ。こうした中、建設現場における省力化や生産性向上は長らく議論されてこなかった。

建設投資額および建設就業者の増減(出所:国土交通省)図1:建設投資額および建設就業者の増減(出所:国土交通省)

 しかし、震災の復興需要や東京五輪開催を背景に、状況は激変した。労力過剰時代は終わりを告げ、労働力不足の時代へと突入したといえるだろう。特に、建設に関する技能労働者約340万人のうち、3割にあたる110万人程度は「今後10年間で離職する可能性がある」と指摘されており、次世代への技術承継は喫緊の課題になっている(図2)。

2014年 就業者年齢構成(出所:国土交通省)図2:2014年 就業者年齢構成(出所:国土交通省)

 このような状況を踏まえ、政府は2016年に「建設現場の生産性革命」をテーマに掲げ、「2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させる」という目標を打ち出した。「i-Construction」と呼ばれるこの取り組みは、ドローンの活用や建設機械の無人化、3次元データ(3D図面)の活用を促すCIMなど、様々なソリューションの活用を促している。