RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)で自動化できる業務は「簡単、大量、繰り返し」であり、複雑な条件が重なる現場には対応できないーーこうしたRPAに対する認識が過去のものになろうとしている。

 2019年7月30日、東京渋谷で「UiPath AI EXPO RobotにAI♥を込めて」というイベントが開催された。主催するUiPathは、主に大企業向けのRPAプラットフォームで急速な成長を遂げている米国発のソフトウェア企業。イベントのテーマは「RPAにAI(人工知能)を掛け合わせることによって起こす生産性向上」。

「AI分野で世界に遅れをとり、RPAは周回遅れだった日本だが、今後は『RPA×AI』が日本を代表するデジタル産業になり得る」と、UiPath日本法人のCEOである長谷川康一氏は語る。この日発表された同社の新たな事業戦略とともに、「RPA×AI」が実現する未来を見てみよう。

RPAは頭脳と手足をつなぐ「神経系」

「紙資料のデジタル化」を例にとってみる。まず、OCR(光学的文字認識)で「手書き読み取り」「レイアウト解析」し、紙資料をデータとして取り込む。この段階で、人がデータをチェックし補正する作業はやはり自動化はできない。しかし、AIを導入することで、補正結果から学習しOCRを最適化して読み取り精度を上げていくことができる。これがAI-OCRだ。読み込んだドキュメントのタイプの判別も学習していく。

「紙のデジタル化」ができれば、さらなる業務自動化が可能となる。取り込んだデータを判別し、そのまま在庫管理や財務管理などの業務システムへ入力するのだ。読み取り判別するAI-OCRを頭脳とし、実際のアクションである業務システムを手足だとすれば、RPAはそれらをつなぐ神経系である。

 チャットボット(自動会話プログラム)やNLP(自然言語処理)でも同様だ。電話対応や、メール・添付ファイルの読み取りを入り口とし、システム上で必要な手続きを行う。さらには、処理が完結した旨をメールや電話で報告することもできる。広義のAI技術とRPAを掛け合わせることで、プロセス自動化の可能性は広がっていく。

UiPath AI EXPOの基調講演で話をする代表取締役CEO 長谷川 康一氏(2019年7月30日撮影)

 ただし、こうした複雑な業務プロセスの自動化には、「何よりも、現場での試行錯誤が重要」と長谷川氏は強調する。「そのためには、現場で複数のAIの組み合わせを試し、使い、運用できる環境が必要です」。