ローンディールが提供するのは、新規事業を託すに足る人材を、大企業などからスタートアップへ一定期間送り込む「レンタル移籍」事業だ。マッチングだけでなく、熱量のあるメンターが、イノベーター候補に伴走して成長を支援する仕組みが高く評価された。レンタル移籍終了後も交流機会を創出し、イノベーションのエコシステムを活性化させる活動にも期待が集まる。代表の原田未来氏に詳細を聞いた。

ローンディール 代表取締役社長 原田未来氏

日本企業の個性を生かす
人材流動化の仕組みづくり

 ローンディール代表取締役社長の原田未来氏には、この事業を始めるきっかけとなった体験がある。大学を卒業し創業期のベンチャー企業に就職、その後、上場するなど会社が成長を続ける中で自らを磨き、新規事業を任されるまでになった。しかし、「この会社しか知らないままでいいのか」「自分は社会でどの程度通用する人材なのか」との思いが次第に募り、会社への愛着心を振り切って13年間在籍したその会社を離れた。

「外へ出てみると、想像以上に新たなインプットを得ることができ、元の会社に対するたくさんの気付きがありました。良い点や改善点、今の自分ならできることなど、アイデアが次々に浮かび、『辞めないと分からない』ことがとても残念に思えました。そこで、『辞めずに外を見る機会』をつくりたいと感じ、ローンディールを立ち上げました」

 ローンディール(Loan Deal)はサッカーなどプロスポーツの「レンタル移籍」を指す言葉だ。原田氏が起業したローンディールが行うのも、企業における人材の「レンタル移籍」だ。期間は半年から1年間程度。大企業や官公庁などからスタートアップ企業へ人材を研修に出し、事業立ち上げの経験を積んで自社に戻る。その全行程にローンディールのスタッフがメンターとして寄り添う。

 日本にイノベーションを興せる次世代リーダーを少しでも増やしたいという同社の思いは明確だが、一方で日本企業特有の長期雇用にも配慮している。「日本企業の人材流動性は、欧米企業のように高くありません。ただ、人材を育てるノウハウや、組織と従業員の強い絆など、ポジティブな面を多く持っています。レンタル移籍ならそれを生かしつつ、日本の人材の流動性を高めることができます」。まさに自身の経験を生かしたモデルといえる。

 組織の硬直化に課題を感じ、自社だけでは「新しい何か」を生み出す力が足りないことを自覚している大企業は多い。そこにローンディールが新しい選択肢をもたらした。創業は2015年。創業4年目を迎えて手応えを感じているという

営業・企画・マーケティングなどのビジネス開発からエンジニアまで、受け入れ企業数は、非公開案件を含めると240社以上に上る