「情報銀行」の登場で企業による個人情報の利活用は進むか?

 個人から信託されたパーソナルデータを適切に管理・運用する「情報銀行」。2019年3月、その事業者認定が始まる。現代のデータ主導社会において強大な価値を生む存在になり得るとあって、三菱UFJ信託銀行のようなメガバンクも参入を表明する等、注目を集めている。

 官民が一体となって普及を急ぐ情報銀行事業とは、一体どのようなものなのだろうか。

「情報銀行」の概要と登場してきた背景

 そもそも、情報銀行とは何だろうか。総務省「平成30年版 情報通信白書」では以下のように定義されている。

・情報銀行(情報利用信用銀行):個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業。

 情報銀行は、個人から購買履歴等、個人情報にひもづく様々なデータを信託され、その管理や、適切な事業者への販売を請け負う仕組みなのだ。データを預けた利用者には直接的、または間接的に何らかの便益が還元される仕組みとなっているため、お金を預けると利息が付いて戻ってくる「銀行」に例えられている。2018年6月26日に総務省と経済産業省が発表した「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」内にある以下の図が分かりやすいだろう。

出典:総務省・経済産業省「情報信託機能の認定に係る指針ver.1.0」より引用

 なお「PDS」の定義は下記の通り(総務省「平成30年版 情報通信白書」より)。

・PDS(Personal Data Store):他社保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有するもの。

 要するに、PDSは主に個人が自らの意思で自身のパーソナルデータを管理・運用するための仕組みを指す。しかし、もはや日々蓄積されていく膨大なデータを個人で適切に管理・運用することは困難となってきている。そこで注目されているのが、安心してパーソナルデータの管理・販売を委託できる情報銀行の仕組みなのだ。

 GoogleやAmazonを例に出すまでもなく、近年「個人情報の利活用」は多方面からの関心を集めている。膨大な量のパーソナルデータを収集して一元管理できる情報銀行事業は、多くの企業にとって魅力的に映るだろう。事実、同事業の審査・認定を行う日本IT団体連盟と総務省が2018年10月19日に行った事業者向けの説明会には、金融・流通・食品・製造・教育・ヘルスケア・通信・放送・コンサル・マーケティング・リサーチ等、様々な業種から約200社、400名以上もの人々が集まったという。

 2017年5月に「個人情報」の定義の明確化や匿名加工情報(氏名等の個人を識別できる情報を削除した個人情報)制度の導入、個人情報を第三者へ提供するための手続き(オプトアウト)の厳格化等が義務付けられた「改正個人情報保護法」が全面施行されたことも、少なからず影響しているだろう。