既成概念に囚われず、イノベーションを生む「デザイン思考」とは

 近年、ビジネスの現場でよく耳にするようになった「デザイン思考」。企業視点ではなくユーザーファーストで課題解決を試みる手法であり、イノベーションを起こすための方法論の一つとしても知られている。今回は、オープンイノベーションやハッカソンの場でもしばしば用いられるデザイン思考の考え方や、使い方の基本を押さえていこう。

デザイン思考が求められる背景

 デザイン思考とは、簡単に言えばビジネス上で生じた課題を解決するため、デザイナーの思考方法を応用するアプローチ方法を指す。Apple Computerの初代マウスのデザインを手掛けるなど、数多くのイノベーションを起こしてきたことで知られるアメリカのデザインコンサルティング会社、IDEOによって広められてきた考え方だ。同社の共同創業者であるデビット・ケリーが2004年にスタンフォード大学に開設した通称「d.school(Hasso Plattner Institute of Design)」も、デザイン思考を学ぶ場として広く知られている。

 デザイン思考が注目されるようになった背景に、モノからコトへと人々の消費活動がシフトしたことが挙げられる。ユーザーは、その製品やサービスを選ぶことで得られる「体験」を重視するようになった。モノを作れば作るだけ売れていた時代ならいざ知らず、モノがあふれている今となっては、企業側の視点だけで作られた目新しいだけのモノが選ばれることはない。

 ユーザーの隠れた欲求は何か。それを満たすにはどうしたら良いのか。それが分かれば、イノベーションを起こすことができるかもれない。しかし、これらを探るにはデータの分析等の従来の手法では不十分だ。イノベーションの種となる潜在的なニーズを見つけ出すには、固定概念に囚われずユーザーの行動や感情に目を向ける必要がある。そのために取り入れられるのが、デザイン思考なのだ。

 クリエイター採用のWebサービス「ViViViT」を展開するビビビットが全国の企業を対象に2018年10月29日から11月1日にかけて実施した「デザイン経営」「デザイン思考」に関する意識調査によれば、経営にデザイン思考を導入していると回答した企業は全体の14.9%にとどまるものの、その内の73.8%が導入後「売上と利益が増加・向上した」と答えている。さらに「製品・サービス・事業の開発・創出」が向上、推進したと回答した企業は86.8%にも上り、手応えを感じていることが分かる。